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#31 歴史ある終着駅 夕張駅(夕張市・石勝線)

無人駅めぐり

道内屈指の大動脈・石勝線ですが、かつてはその石勝線の新夕張駅から夕張(ゆうばり)駅まで支線が伸びていました。この支線は2019年に廃止となってしまいましたが、かつては夕張の石炭を運び出すことに使われていた路線で、非常に長い歴史を持ちます。

石炭運搬のため夕張まで鉄道が延ばされ、夕張駅が開業したのは1892年のこと。道内でもかなり古い方でしょう。

ずっと続いてきた線路も、ここが終点。駅のすぐ横には、「ホテル マウントレースイ」があります。スキー場を備えたリゾートホテルです。

駅名標も、ここが終点であることを示しています。何だか終着駅っていいですね。

乗ってきた列車は運転手さん1人で折り返しの準備をしています。わずか10分ほどで新夕張方面に折り返してしまうようです。

駅舎はどこかメルヘンチックです。楽しげな雰囲気とは裏腹に、無人駅であり、利用者もそう多くはありません。

駅舎内はそれほど広くはありませんが、突き当たりに喫茶店があります。またいろいろな掲示がされており、少しビジーかもしれませんが、それゆえに明るい雰囲気でもあります。

石炭の運搬で栄えていた頃の夕張市の写真でしょうか。

一応この写真が貼ってある区画には、「夕張観光案内センター」という掲示があります。日中なら、誰かがここにいて色々教えてくれたのでしょうか。でも、夕張駅の列車本数は1日わずか5本。7時、8時、12時、16時、19時ですから、本当に日中の便、といえるのは12時台の1本のみ。またここ夕張駅は夕張市の中心部から離れており、駅の隣のホテル「マウントレースイ」の専用駅のような趣です。チェックイン時間にちょうどいい16時の便でこの駅にきましたが、この駅で降りる観光客の数はゼロ。いやいや、こんな状況を考えたら、この観光案内センターはずっと無人なのかもしれません。もし本当に観光案内の人もいなく、掲示もこのモノクロ写真だけなら、よくこれで観光案内センターを名乗ってるな、という感じですよね。

気づけば日はどっぷりと暮れ、完全に夜の趣に。

凍てつく夜の夕張駅。美しいです。

ホームからホテル「マウントレースイ」を望みます。かなり大きなホテルであり、併設されているスキー場もかなり広いです。この夕張駅を、観光客誘致にもっと使えなかったものか、と思ってしまいます。なにしろ駅とホテルとスキー場がほぼ直結しているのですから。それに新千歳空港や札幌にも遠くない立地。広報に力を入れれば、ポテンシャルは高かったような気もします。

石勝線沿線にはトマムリゾートもあり、そちらが超人気であることを考えれば、なおさらです。まあトマムの方が何十倍も大きな施設であることはとりあえず置いておいて。

ホームは長いですが、通常ここに来る列車は1両です。これだけ長いホームなら、リゾート客誘致用の臨時列車でも走らせられたような気がしますが、なかなか難しいのでしょうか。札幌から南千歳経由でここまで来る臨時特急列車とか走らせられそうですけどね。まあ、北海道好きの旅行者の感想ではそう思った、というだけで、プロの方がやらないということは、何か難しい課題があるのか、走らせても意味がないということなのでしょう。

ホームだけは長くとも、線路は1本だけ、敷地も狭い夕張駅を見て、本当に昔栄えた駅なのか?と思ってしまう方もいるでしょう。それは大正解で、実は昔の夕張駅はこの場所になかったのです。もっと先まで線路が続いており、ここから2.1kmほど先にありました。現在の石炭の歴史村付近です。石炭の運搬のために敷かれた鉄道路線ですから、石炭の搬出に便利な場所に駅があったのです。

石炭の搬出がなくなると、今度は夕張の中心部に駅があった方が便利だということで、1985年、路線を1.3km短縮し、その終点を夕張駅としました。利便性を考えて夕張駅を移転したのです。

あれ、夕張駅は町の中心部から離れているのでは・・・?そうです、実はその後、もう一度夕張駅は移転されています。1990年に、路線をさらに0.8km短縮してホテルマウントレースイ横に駅を移しました。これが当記事で扱っている晩年の夕張駅です。リゾートホテル横に駅を移したのは、やはり観光客の誘致を狙ったのでしょうか。

立派なホテルだけに、夕張駅を活かしきれていないのは残念なところです。北海道において、冬の車の運転はハードルが高いので、鉄道の駅にほぼ直結しているというのはかなりのアドバンテージになりそうな気がしますが・・・。

朝になりました。始発列車が静かに出発を待っています。

乗り込む方は地元の方と思われる方が大半で、旅行者の姿はほとんどありませんでした。

列車に乗り込み、この小さな終着駅を後にしました。

(2016年12月訪問時)

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