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#3 蕎麦畑の小さな駅 天塩川温泉駅(音威子府村・宗谷線)

無人駅めぐり

旭川から普通列車で北上すること3時間程度。北海道で一番人口の少ない村、音威子府(おといねっぷ)村にある駅です。

ずいぶん簡素な駅だと思う人もいるかもしれません。しかしこのような駅は北海道にはよくあるタイプです。駅を設置するほどではなかったものの、住民のため簡易的な乗降場が欲しい、という経緯で開業したのがはじまりです。すなわち、もともと正式な駅として開業したわけではないのです。

このような乗降場を「仮乗降場」といいました。この駅は「南咲来(みなみさっくる)仮乗降場」として開業し、国鉄分割民営化とともに駅となったのです。

この辺りは蕎麦の栽培で有名です。2022年に廃業してしまいましたが、畠山製麺の真っ黒い「音威子府そば」や、逆に白い「咲来そば」、そして畠山製麺さんの廃業後にも新しい蕎麦が複数開発されるなど、蕎麦で有名です。それを示すように駅周辺は蕎麦畑が広がります。

また駅名のとおり、この駅からは天塩川温泉まで歩いて行くことができます。およそ1kmです。ただ、列車本数が非常に少ないので、実際はこの駅を利用して温泉に行く人はほぼいないでしょう。特急停車駅である音威子府駅からは無料の地域バスが出ています。一応そのバスはこの駅も通りますが。

地盤沈下なのか、待合室はだいぶ傾いており、ホームの高さと全く合っていませんでした。中にいるとかなり傾いているのがわかり、なんだか気持ち悪かったです。その後改修工事が行われ、現在は直っているようです。

ところで上の写真に少し写っているように、この駅にはなんとストーブがあります。冬でも暖かく列車を待てるのは、非常にポイントが高いでしょう。やはり他の無人駅と違い、天塩川温泉への観光利用を想定しているのかもしれません。

待合室内のベンチも、都会の駅にもありそうなちゃんとしたやつです。長椅子タイプの駅もたくさんあることを考えれば、立派な設備です。

そして反対にはごろ寝できそうなスペースが。長時間の列車待ちの際に寝転がってみたい場所ですが、駅舎内での寝泊まりを助長するのであまり良くないのではないでしょうか。

窓の外はなんとものどかな風景。曲がった駅名標も味がありますね。

駅舎内には、この駅が所在する音威子府村の観光パンフレットが置かれていました。それにしても、「音威子府村取扱説明書」とは、なかなかセンスがいいですね。パッと目をひき、読みたくなるデザインです。

特に次の列車まで時間はまだまだあります。そんな時に読むのは、スマホ内の記事ではなくこういう読み物でありたいものです。パンフレットによると、音威子府村の住民は人をひと目見ただけで村内の人間か村外の人間かわかる特殊能力を持っているようです。さすが北海道で一番小さい村。ちゃんと観光案内になっている一方で、ウィットが効いている記述は好感を持てます。

そうこうしているうちに雨が降ってきました。雨に濡れた板張りのホームは風情がありますね。鉢に植えられた花も彩りを添えます。

傘を開いて駅の外へ。駅から大通りに出ても、車の通りはありません。民家も何もありません。標識すらありません。

こんなロケーションですが、先述したように駅前には地域バスのバス停「天塩川温泉駅前」があります。

運行本数は1日上下5本ずつあるので、列車の本数より多いです。またすごいのが、この地域バス、無料なんですよね。村民じゃなくても無料です。私もこの駅からではないものの使ったことがあります。バス自体はワゴン車で運行されており、ジャンボタクシーのような趣です。音威子府村にはタクシーがないのでこのような交通機関は旅行者にとって救世主のような存在かもしれません。

踏切が鳴ったと思えば、稚内からの特急「サロベツ」の通過でした。

最後に。#1(紋穂内駅)、#2(抜海駅)、#3(天塩川温泉駅)は、すべてNHKの番組「小さな旅 最果ての鉄路で〜北海道宗谷線〜」で登場している駅です。再放送等で見る機会があったら、ぜひご覧になるといいと思います。いい番組です。

(以上2022年7月訪問時)

天塩川温泉駅・2019年

2019年の天塩川温泉駅です。

小さな駅ですが、赤い屋根の待合室が存在感を放ちます。

パッと見て気づくのは、鉢植えの数の違いです。2022年と比べて明らかに少なく、3つしかホームに置かれていません。まだ当時は、この駅の存廃など大して議論されておらず、「みんなでこの駅を守る!」という意識はまだ薄かったのかもしれません。鉢植えの数が増えたのは、それだけ駅が注目され、守られている証拠。嬉しい変化ですね。

この頃は待合室のドアも傷んでいます。2022年の訪問時にはそんなことはなかったので、その後修復されたのでしょう。

こうやってみると、なかなかおしゃれな建物です。

天塩川温泉駅・2013年 夏

2013年の天塩川温泉駅。この頃から雰囲気は変わっていませんね。

鉢植えはひとつもありません。でも待合室は非常に綺麗な姿で、2022年で大幅に傾いていた待合室はしっかりホームの高さに合っています。きっちりして見えますね。あとは「ホーム端」の看板が、錆びきっていますが立っています(写真左、ホームに上がるスロープの下からすーっと上に伸びてる看板です)。これは写真をみると2019年にもまだ立っていたことがわかりますが、2022年にはすでに撤去されてしまったようです。この表示は、積雪時にホームの端がどこかわからなくなることがあるので、注意喚起をするものです。

やっぱりのどかな風景。何時間いてもいいですね。

天塩川温泉駅・2013年 春

待合室前は綺麗に除雪されている、早春の天塩川温泉駅。利用者がいたのかはわかりません。

「てしおがわおんせん」。もっと観光地を想起させる駅名ですよね。何も知らずに来ると、駅名と駅施設のギャップにびっくりしてしまうかもしれません。温泉入りたい、降りてみよう、で気軽に降りる駅ではないでしょう。

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