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最北の最終列車「特急サロベツ3号」の浪漫

鉄道・航空・バス

日本最北のまち・稚内。果てしなく遠く、行くのが難しい場所というイメージがある方も多いでしょう。実際、稚内駅に行く特急列車は1日3本のみ。普通列車も3本ありますが、うち1本は旭川を早朝6時に出て稚内まで6時間かけて走る便、残りの2本は途中の名寄(なよろ)始発なので、一般人が使えるものではありません。

しかし稚内駅へ向かう最終列車は、というと、意外と遅いのです。札幌から稚内へ向かう最終の乗り継ぎは、札幌18時30分発の特急「ライラック35号」で旭川まで行き、旭川20時06分発の特急「サロベツ3号」に乗り込むことです。「サロベツ3号」の稚内到着は23時47分。1日にたった3本しかない宗谷線特急のうち、1本がこの時間帯の運転なのです。

始発の旭川を出るのが20時過ぎ、そして日付が変わる直前に最北の駅に到着する、そんな「サロベツ3号」に乗って、漆黒の世界を疾走してみましょう。

「サロベツ3号」は当然ながら、真っ暗闇の中をひたすらに北へ走る列車です。したがって、絶景の宗谷線にもかかわらず何の車窓も見えません。宗谷線の車窓について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

夜8時の旭川駅

北海道第2の都市である旭川も、夜8時となるとだいぶ静かで、人影もまばらです。そんな時間帯に、ここから最北のまちへ向かうのが、特急「サロベツ3号」。この前の稚内行きは13時01分発の特急「サロベツ1号」なので、7時間ぶりに出発する稚内行きです。

ホームに上がると、すでに列車はドアを開けて待っていました。ちなみに乗車時は2月、真冬です。冬季の宗谷線の列車は悪天候で運休になりやすく、この前の週は、低気圧接近に伴う暴風雪による運休、そして低気圧通過後も除雪作業を行うための運休などで、ほとんどまともに動いていませんでした。この年の2月の宗谷線の運休率は5割程度だったのではないでしょうか。2日に1日動くか、というレベルであり、仮に動いたとしても鹿との衝突やドアの凍結、車両故障による遅れも珍しくありません。いかにこれから向かう稚内と、そこまでの旅路が過酷なものかを物語ります。

サロベツ3号、稚内行き。4両編成です。ここから大自然の中、過酷な旅路を突き進んで稚内まで連れていってくれます。

ホームにもほとんど人の姿はありません。

一応進行左側に座り、静かに発車を待ちます。宗谷線は左側の方が車窓が美しいからですが、まあ関係ありませんね。

漆黒の世界

真っ暗闇の中を走るだけ、なんて面白くないとお思いでしょう。いや、それも北海道の醍醐味なんですよ。普通、真っ暗と言ってもポツポツ街明かりが見えたり、街灯が見えたり、車が走っていたりするでしょう。しかし、北海道だと結構、本当に何の灯もない世界を走っていくのです。深夜帯の列車は乗客がまばらなことも多く、すごく神秘的な汽車旅を味わえるのです。どこを進んでいるのかわからない、進んでいるのかさえ視覚には見えない、でも確かに走っている感覚、結構クセになるんですけどね。

まずは停車駅ではないものの、信号切り替えのために止まる永山駅。この駅まではまだ旭川都市圏といった感じです。永山駅を出て、最初の停車駅・和寒(わっさむ)までの間は峠越え区間(塩狩峠)です。全く何も見えませんが、列車のエンジン音が大きくなり、カーブも多い区間なのがわかります。

青い椅子、青い天井という寒色系の車内が、冬の夜、最北へ向かう車内の雰囲気にぴったりです。

旭川を出て1時間ほど、21時ごろ。宗谷線内最大の駅、名寄(なよろ)駅に到着です。ここ名寄から先は超閑散区間。本当に大自然の中を走っていくことになります。また路盤も弱い区間になり、列車のスピードも一気にゆっくりになります。

列車は凍てつく天塩川のすぐ隣を、川に沿って走っているはずです。何度も乗っていると、橋梁を渡る音やカーブの感じで大体あそこを走っているんだろうなーっていうのはわかったりもします。

しばらく寝かかっていました。21時48分、北海道で一番小さな村、音威子府(おといねっぷ)に到着です。列車は暗闇の中ブレーキをかけます。

22時20分、天塩中川駅。とても令和の車窓とは思えません。もう2時間以上走ってきましたが、まだ稚内までは1時間以上あります。引き続きうとうとしながら行きます。

ふと目を開けると、満月が見えました。満月の位置が右へ行ったり左へ行ったりすることで、列車が右へ左へ蛇行しながら走っていることを実感できます。

気づけば車内の乗客もまばらになっていました。

ついに稚内駅の一つ手前、南稚内駅に到着です。実は稚内市の中心部はここ南稚内駅付近です。

稚内駅に到着

23時47分、なんと驚くことに定刻で稚内駅に到着しました。暖かい車内から一転、外に出ると身を刺すような寒さです。

列車から降りたわずかな乗客が改札口へ向かいます。大きな荷物を持たれている方が多かった印象でした。

真新しい駅舎には、人の雰囲気はありません。当たり前です。もうこの時間、駅員さんも誰もいません。

改札口もみどりの窓口も、誰もいません。

稚内駅の建物は稚内駅のほか、道の駅や高齢者住宅、地域交流センターなどが入っている複合施設です。その中で稚内駅の部分だけ、この最終列車の到着のために電気をつけて待っていてくれたのです。

セイコーマートも閉まっていました。

駅前です。車の通りもありません。

道路はツルツル。少しの油断も許されません。スケートリンクのようでした。

宿泊場所・ドーミーインまでは通常は徒歩2分ですが、この路面だとかなり時間がかかりそうです。しかしホテルに入ると、フロントにはまだしっかり人が出ており、他にチェックインする方もいらっしゃいました。1日3本しかない特急のうち1本がこの時間に着くわけですし、宿泊施設も多くありませんから、当たり前と言えば当たり前なのかもしれません。でも、こんな夜遅くまで対応していただいて本当にありがたい限りです。

コメント

  1. ばやしの北海道紀行 より:

    This is a test.

  2. ばやしの北海道紀行 より:

    This is a test, just to be sure.

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