札幌・小樽と新千歳空港を結ぶ快速「エアポート」。新千歳空港を利用する方の多くが、札幌方面との行き来に使う列車です。快速・特別快速・区間快速合わせて毎時６本と本数も多く、６両編成で運転され、JR北海道の稼ぎ頭となっています。
そんな快速「エアポート」には、６両編成のうち指定席車両が１両だけあります。４号車の指定席「uシート」です。（残りの１〜３・５・６号車はすべて自由席です）
「uシート」の由来と2022年の値上げ問題
「uシート」の名前の由来は、余裕（u）あるシート、あなた（You）のために、などの意味であるようです。石原裕次郎とかけて「裕シート」とする案もあったといいますが、結果的に「uシート」に落ち着きました。その由来の通り、ただ着席が保障されるだけでなく、特急列車と同等の快適なシートが用意されています。シートピッチに関しては、JR北海道の特急車両標準の960mmよりも広い1030mm。特急列車以上のゆとりある空間です。
このuシートに乗るためにかかる指定席料金は840円。2022年3月の改正までは530円であったものが一気に840円に値上げされ、その際は利用客から困惑の声が広がりました。
530円だからよかったが、840円は高すぎる、もう乗らない、と。
ではuシートの840円は本当に「高すぎる」のか？ということを考えたいと思います。
uシート840円は本当に高いのか？
快速「エアポート」は地元客の利用も多いとはいえ、基本的には空港連絡の列車です。したがって飛行機利用を前提に、飛行機のサービスとuシートを比べてみるといいのではないかと思います。比べたいのはJALのクラスJです。
クラスJは、普通席のワンランク上の座席です。ビジネスクラスより下、普通席より上といった立ち位置です。クラスJは、当日空席がある場合に限り、2200円（羽田ー新千歳の場合・路線によって異なる）を追加で支払うことで乗ることができます。この料金も2023年4月に改定されたもので、その前はたった1000円の追加で乗ることができました。たった1000円でクラスJというのは、利用客には「安い」と大好評でした。
ここで、以下のA, Bの２つの選択肢が与えられたら、どちらを選びますか。
羽田空港から札幌へ行くのに、
A 羽田空港ー新千歳空港（100分）は「たった」1000円追加でJALのクラスJ、新千歳空港ー札幌（40分）は自由席で立ち移動
B 羽田空港ー新千歳空港（100分）はJALの普通席、新千歳空港ー札幌（40分）は840円追加でuシート移動
私ならBですね。uシートがクラスJと同額（1000円）でもBを選ぶでしょう。
なぜなら、JALは普通席でも十分快適だからです。わざわざクラスJにしなくとも、普通席でなんの不満もありません。しかしJRのuシート移動と立ち移動には雲泥の差があります。要するにAは「快適な飛行機＋我慢の電車」で、Bは「快適な飛行機＋快適な電車」だということです。
ここでは快速「エアポート」の自由席は立ち移動と仮定しましたが、もちろん自由席でも座れる可能性はあるので、一概には言えません。しかしこのように考えれば、840円払って快適な席を確保するというのは、結構意味のあることなのではないでしょうか。
おそらく高すぎるという人は、快速「エアポート」の区間しか考えていないのだと思います。札幌から新千歳空港までの運賃（自由席利用）は1150円。そこにuシート料金が840円加算されるとなれば、体感的には2倍近くに料金が跳ね上がり、高い、乗らなくていい、となるのだと思います。しかし飛行機移動も含めた旅程全体で見れば、クラスJへのアップグレードと同じように、uシートがそこまで高いとは思わないのではないでしょうか。
快速「エアポート」のuシートは、観光客向けでしょう。毎日使うものではありません。だとすればやはり、思い出に残る快適な旅行を保証するための840円は、高いとは思いません。むしろ、530円だと観光客以外、通勤客などが利用してしまうので、それを防ぐための値上げだったのかもしれないですね。「通勤客でuシートの座席が埋まるという状況をなくし、空港利用客がuシートを使えるようにする」「JR北海道の稼ぎ頭で増収をはかる」どちらの側面からも、uシート値上げは適切だったと思います。
それでもuシート登場時は300円だったのに、やっぱり高い、という意見もあるでしょう。しかしuシート登場時は、uシート以外の自由席車両でも快適な転換クロスシートでした。座席の質自体の差はそんなになかったのです。今は自由席車両は立ち客を詰め込めるロングシートが主流。uシートと自由席の座席格差が大きくなっているのですから、価格差が大きくなるのも当然です。
最後に。uシートはかなり快適なので、おすすめです。特に小樽〜新千歳空港などの長距離利用の際に積極的に利用したいものです。
ただしコンセントがないので注意してください。それが唯一の欠点でしょう。
自由席を検討されている方へ
以上、指定席uシートをお勧めしてきましたが、やっぱり指定席uシートではなく、追加料金840円の不要な自由席への乗車を検討されている方は、以下の記事も参考になさってください。uシートは非常に快適ですが、実際のところ私自身もほとんど自由席を使います。安いので。
