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#27 湖のほとり 東鹿越駅(南富良野町・根室線)

無人駅めぐり

※東鹿越駅は、2024年3月31日をもって、廃止となります(根室線・富良野〜新得間路線廃止のため)。ご訪問はお早めに。

根室線は、空知地方の滝川(たきかわ)駅から北海道の東の果て、根室(ねむろ)駅までを結ぶ443.8kmの長大路線です。

しかし2016年8月の台風の被害により、途中の幾寅(いくとら)〜新得(しんとく)駅間が被災。信号設備の関係で幾寅駅では列車の折り返しができないため、幾寅駅の一つ手前、滝川から東鹿越(ひがししかごえ)駅までは列車が走り、東鹿越〜幾寅〜新得間はバス代行輸送、新得から根室までは列車が走るという運行形態となりました。

これにより、東鹿越駅は、列車と代行バスの乗り換え駅となったのです。

実は、東鹿越駅の利用客数は、元々1日1人にも満たないレベルでした。そのため、2017年3月のダイヤ改正をもってこの駅は廃止される予定でした。

しかし先述のように、幾寅〜新得駅間の台風災害により、東鹿越駅はバスと列車の乗り換え拠点として必要な存在に。2017年3月での廃止は撤回されたのです。

線路が被災したことは大変悲しいことですが、その一方で線路が被災したおかげで生き残った駅、それが東鹿越駅であるわけです。そして列車の終着駅となったことで、富良野(ふらの)駅や滝川駅では「東鹿越行き」の表示も日常的に出るようになり、一躍有名な存在となります。廃止予定の超閑散駅から、多くの人が使う乗り換え拠点の駅になった、極めて稀有な運命の駅ではないでしょうか。

そんな東鹿越駅、実は魅力もたっぷりです。

まずは富良野方面から列車に乗って東鹿越駅に近づくと、車窓にはこんな風景が広がります。

真っ白ですが、かなやま湖です。実はかなやま湖が見える時間はそう長くありません。トンネルを抜けると、いきなりパッと車窓に広がる湖の美しさは、かなり感激するものです。

東鹿越駅は、そんなかなやま湖の湖畔にある駅です。

列車は東鹿越駅に到着します。ここで乗客は全員下車。みんな代行バスに乗り換えます。ここは路線としては途中駅ですが、ここから先は被災区間のため列車は進めず、東鹿越駅は事実上の終着駅となっています。

被災のため、もう列車が向かうことのない幾寅方面を眺めます。遠くに見える信号は、2016年の災害以来ずっと赤信号を灯し続けているのでしょう。そしてもうあの信号が青信号を灯すことはないわけです。被災区間を復旧しようという考えはJR北海道にはなく、路線そのものが廃止されようとしています。

山の向こうに向かって続いているレールが、なんとも寂しいです。明治時代から多くの人を運んできた線路ですが、もう列車は入りません。

乗ってきた列車は折り返しの準備をしています。運転手さん1人のワンマン運転。点検から折り返し作業まで全て1人で行っています。

なんでもない光景ですが、こういうのがなかなかいいものなのです。

遠くの山も、雪も、かなやま湖も、自然の美しさに溢れています。一方で、この駅から先に列車が進めないのもまた、自然のせいであったりするのです。

ホームには「かなやま湖案内図」がありましたが、さっぱりわかりません。

ホームには大きな「石灰石」が。そうです、ここは昔、石灰石の採掘で賑わった場所です。

かつては東鹿越駅の隣に鹿越駅がありました。というのも、昔は線路が通っているルートが現在と少し異なっていました。鹿越駅はその旧ルート上にあり、現在かなやま湖がある位置になります。その当時は、かなやま湖はなく、陸地になっており多くの民家があったようです。石灰石も、この鹿越駅からも列車に積み込まれており、鹿越地区の中心地として栄えていました。しかし金山ダムとそれに伴う人造湖・かなやま湖の建設に伴い線路は移設、鹿越駅は廃止され、現在は駅跡も集落跡も湖の底に沈んでいます。

ホームから見てかなやま湖側に駅舎があります。駅舎の向こうはすぐかなやま湖なのですが、真っ白なので、湖であることはわかりにくいですね。しかし実際に現地に行くと、湖の雰囲気というのはしっかり感じ取れるものです。

駅舎は木造で大きく、風情があります。少し上品な色合いも、湖畔の静かな雰囲気によく似合います。

駅舎に書かれた、ドア上の「ひがししかごえ」のひらがな表記がどこか郷愁を感じさせます。

駅前には新得行きの列車代行バスが来ています。列車からの乗り継ぎ客を乗せて、発車を待っています。

一方で、代行バスで新得方面からやってきたお客さんは、富良野方面への列車に乗り換えるべく、乗車口の前に並びます。

駅舎正面はこんな感じです。角張った駅舎に、赤いポストがいいアクセントになっています。駅周辺や駅施設に、これといった唯一無二の特徴があるわけではないのですが、不思議な魅力を持つ駅のように感じます。

庇を見上げると、色が塗られていない木が剥き出しでした。味わいがあります。

駅舎内には南富良野高校のカーリング部のポスターがたくさん貼られていました。カーリングが強いのでしょうか。実際のプレーはかなり難しいのだと思いますが、本当に面白そうなスポーツですよね。ちなみに私は冬季オリンピックは大体カーリングメインで見ます。いつもテレビで見ていますが、テレビだと真上からカメラで写せるのでストーンの位置がわかりやすいものの、実際にプレーしている立場だとそういう位置のジャッジも難しそうですよね。それにしてもカーリング部。やっぱり北海道の学生は羨ましいです。

とても魅力的な東鹿越駅でしたが、もうすぐ代行バスが発車するのでそれに乗らなければなりません。10人ほどの乗客を乗せた立派な代行バス車両に乗り込み、この静かな駅を後にしました。

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