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#23 毛織の北紡!! 北星駅(名寄市・宗谷線)

無人駅めぐり

宗谷線の名寄(なよろ)駅から北は、列車本数が急減し、普通列車の本数が1日上下4本ずつのみになります。そんな閑散区間、名寄駅から北へ2駅のところにあったのが、宗谷線の北星(ほくせい)駅です。北の星、という駅名にふさわしいロマンあふれる駅です。

北星駅に降り立ち、過ぎ去っていく列車。こんなところに降りて大丈夫なのだろうかと思ってしまう駅の一つです。

年季の入った駅名標です。

板張りの駅のホームからは、雑草が顔を出していました。

ホームは木の板を渡してあるだけなので、歩けば足音が響きます。

緑の中の小さな踏切から見渡すと、まっすぐ貫く線路に木造の短いホームが寄り添っているのがわかります。こんな忘れ去られたような駅でも、時間になればしっかり列車がとまります。すごいですよね。

幹線道路からも遠く離れているため、周囲は虫の声と鳥の声のみが響きます。それでも、駅へと続く道には砂利が敷かれ、意外にも綺麗に整備されていました。駅につながる道にはとても見えませんが、不思議と郷愁を誘う道に思えます。思わぬ思い出が蘇ってくるかもしれません。

北星駅の待合室はボロボロですが、木の温もりに満ちています。そしてなんといっても特徴的なのが正面の「毛織の北紡」の看板。北紡(ほくぼう)はかつて旭川にあった紡績会社で、1970年に解散してしまいましたが、今でもこの駅にその広告が掲げられています。この看板が強烈なインパクトを放ち、北星駅の象徴のようになっており、2021年に北星駅が廃止された後も、名寄市北国博物館にて大切に保存されていたりします。

かつては横にトイレもあったそうですが、晩年はトイレ内も草が生い茂り、使える状態ではなかったようです。いつまで利用されていたんですかね。

待合室に入ろうとすると、入り口には蜘蛛の巣が張られていました。しばらく誰も入っていないのかもしれません。

待合室内は木の温もりに満ちており、窓枠も木でできています。

全く駅施設とは思えない外観ですが、待合室内には時刻表やポスターが貼られ、ここが駅であることを証明しているようです。壁もベンチも木でできており、本当に温もりを感じます。

天井もボロボロです。板切れが落ちてきてもおかしくない感じですね。そして驚くことに、照明がありません。周囲も真っ暗ですから、夜は真っ暗なのではないでしょうか。一応窓があるので、駅のホームの照明が待合室に少し入るのかもしれませんが、ホームと待合室はそこそこ離れていますからね。

待合室のドアには「ドアは外れやすいので丁寧に開閉してください」の文字が。私には「待合室は壊れやすいので丁寧にご利用ください」に見えました。

改めて待合室を眺めますが、やはり農作業用の倉庫にしか見えません。

車道に出てみます。車通りも人通りも当然のようにありません。

分岐がありますが、直進するとどこに行くのか、左に曲がると何があるのかは全くわかりません。どんなところに行き着くのか歩いて行ってみたくなりますが、次の列車に乗り遅れたら洒落にならないのでやめておきましょう。

傾いた倉庫がありました。北星駅の待合室と大して変わらないなんて言ってはいけません。

駅前一等地は畑です。緑に囲まれており、主要道路からも遠いので、周囲の散策はなかなか楽しいです。本当にのどかな駅ですね。そしてぜひボロボロの待合室の中で遠くに見える山々の稜線を眺めながら、ぼんやりしてみたい駅です。

北星駅は2021年3月、その役割を終えました。現在はホーム、待合所などの施設はすでに解体されています。

(以上2019年8月訪問時)

北星駅・2021年

2021年2月の北星駅です。廃止の1ヶ月ほど前になります。

畑は雪に覆われています。新雪が気持ちよさそうです。

ここに建ち続けてきた独特の待合室も、あと少しで役割を終えます。

駅名標を見ると、隣駅の駅名が張り替えられています。かつてはこの駅と日進(にっしん)駅の間に智東(ちとう)駅がありましたが、2006年に廃止されました。北星駅の名前が消される日も、すぐそこに近づいています。

北星駅・2013年夏

駅の雰囲気は変わりません。ホームの一部は防腐剤が塗られていました。

スロープも木製。滑り止めのための突起がついています。

「毛織の北紡」はこの駅のトレードマーク。待合室はボロボロでも、この看板には艶があるように思えます。

北星駅・2013年 春

2019年にはなかった建物が見えますね。この頃の方がまだ少し、ほんの少しだけ、駅前に人の営みを感じられたかもしれません。

静かに雪解けを待つ、早春の北星駅です。

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