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#2 存廃に揺れる最果ての駅 抜海駅(稚内市・宗谷線)

無人駅めぐり

2021年廃止予定であったものの、反対運動によりなんとか存続、そして2022年も23年も廃止が議論されている抜海(ばっかい)駅。この駅の1日の乗車人員は2人程度で、廃止もやむを得ない数字ですが、それに反して知名度は高い駅です。

この駅は、稚内駅から2駅南に位置する日本最北の無人駅であり、日本最北の木造駅舎を持ちます。映画「南極大陸」のロケ地としても知られ、鉄道ファンや旅人からの人気を集めています。

この駅に止まる列車は、1日に上り4本、下り3本です。抜海の集落からは離れており、周囲は原野が広がっています。いかにも最北の地、といった趣です。

駅舎は正面こそ外壁が補修されていますが、ホーム側は大正13年の開業当時の姿を色濃く残しています。おそらく駅の正面側は海風があたり、腐食が激しいのでしょう。

植木鉢に花が植えられていることから、愛されていることが伝わってきますね。

この駅からは日本海も遠くありません。かつては駅から3kmほど離れたところに、「ゴマフアザラシ観測所」があり、冬に営業していました。プレハブ小屋であるものの、管理人さんもいて暖房も効いており、観光にもってこいでしたが、現在は営業していません。また、この付近の海辺は天気が良ければ雄大な利尻山を望めます。宗谷線の車窓からも利尻山を見ることができ、特に抜海〜南稚内間の日本海と利尻山を同時に見渡せる区間は、宗谷線のハイライトでしょう。この車窓は10秒ほどしかみられないので、写真を撮りたい場合は注意が必要です。

窓もドアもアルミサッシではなく木でできています。駅名表示といい、植木鉢といい、青い屋根といい、風情があります。

貝殻でできた「抜海駅」の看板は、この駅の名物です。初めて訪問したときは綺麗でしたが、すでに「海」の下半分と「駅」の左上は剥がれてしまっています。

最北の駅らしく、雪切り室があります。すなわち、待合室に入るまで扉が2重になっています。冬の寒さと暴風雪の厳しさが偲ばれます。この辺りは暴風雪の多発地域です。

駅舎内はだだっ広く、やや薄暗いです。駅舎内の照明は手動でつけることができました。

風格ある木造駅舎も、さすがに歪みを見せています。

まさに最果ての地。すごいところまで旅してきた、という感じがする風景です。

ホームには「たしかに!」の文字が。これは国鉄(JRの前身・日本国有鉄道)の標語であるそうです。「た」=タブレットはよいか?「し」=信号はよいか?「か」=客扱いはよいか?「に」=荷物扱いはよいか?を表し、乗務員にチェックを喚起するものです。今は(鉄道でいう)タブレットなんて全国探してもありませんし、荷物扱いも基本的にはありません。今あるのは信号と客扱いですが、客扱いと言ってもこの駅の利用者は1日2人程度、列車本数は上下線合わせても7本のみ。一体いつ頃ここに書かれた標語なのでしょうか。

暗くなってきました。誰も来ない駅舎にも明かりが灯ります。

稚内行きの最終列車が迎えにくるまで、あと少しです。

抜海駅は廃止が議論されているので、訪問されたい方はお早めに。

(以上2022年7月訪問時)

抜海駅・2021年

2021年の真冬の抜海駅です。抜海駅は風が強いことも多いですが、この日の天候は落ち着いていました。2021年2月の宗谷線は悪天候により2日に1日は運休のような状態だったものの、なんとか運よく下車することができました。

灰色の空と、それに調和するような色物要素のない大きな駅舎。モノトーンの世界が、最北の無人駅にふさわしい雰囲気です。

ドラマのセットではありません。現役の鉄道駅です。雪の降り積もるホームで列車を待てば、1日3〜4本だけとはいえ時間通りに列車がやってくるのです。

駅名標は、長年の風雪を受けて曲がっているようです。駅の背後には、暴風雪から鉄道施設を守るための木々、鉄道林が。鬱蒼としており決して人を寄せ付けない雰囲気を放っています。

駅舎には一応トイレもありますが、「凍結の為使用出来ません」との殴り書き。ガムテープでドアに貼り付けられています。

原野の中、遠くへ続いていく線路は頼もしく見えます。この駅は線路が2線あり列車の行き合い(すれ違い)が可能ですが、合流するのはかなり先ですね。かつて多くの車両を連結した長い列車が行き合いを行っていた名残でしょうか。今は普通列車は1両、この駅を通過する特急は4両が基本で、貨物列車は通りません。

音のしない空間。澄んだ空気。無人駅の醍醐味です。

駅に降りたらぜひ駅前通りを歩きたいもの。かなりツルツルなので慎重に歩く必要があります。駅周辺の民家は1軒のみで、抜海の集落まではおよそ2km。この真冬に歩くには勇気のいる距離ですが、それでも抜海地域の心の拠り所として愛されているのでしょう。

抜海駅・2013年 夏

ホームには花が植えられ、冬の過酷さとは裏腹にのどかな風景です。鳥の鳴き声も響きます。

他の宗谷線の駅には虫が多いところが多いのですが、ここはそうでもありません。ゆったりとした時間を過ごすことができます。

抜海駅・2013年 春

2013年春に訪れた際の抜海駅は、この地域らしく強風が吹いていました。

風が強く、列車を待つのも一苦労です。抜海駅をはじめ、宗谷地方は冬に風が強くなるのです。ホームに積もった雪は氷のようになってへばりついており、スケートリンクのようです。

隣駅の「南稚内」という表示に都会の雰囲気を感じますが、南稚内駅までは12kmほど離れています。

駅の正面です。駅舎は雪もついていなく綺麗な姿です。春になってきて溶けた分もあると思いますが、強風で飛ばされてしまったという側面もあるでしょう。

この頃は「ようこそ抜海駅へ」のパネルがありました。いつの間にか外されてしまったようですね。「サロベツトロッコ号乗車記念」の文字がありますが、なんのことかはさっぱりわかりません。

この頃はまだ抜海の「ゴマフアザラシ観測所」が営業していました。

プレハブ小屋ですが、中は暖房がきいています。訪問者も多くなくこぢんまりしている分、中の方が詳しく説明をしてくれます。

肉眼でも見えますが、双眼鏡を覗き込むことで、しっかりアザラシを観察できます。

あとは待合室のごときベンチが。割とアザラシや動物好きなど、コアな方の訪問が多いようでした。

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