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#8 千鳥ヶ滝の雄大な姿 滝ノ上駅(夕張市・石勝線) 

無人駅めぐり

※滝ノ上駅は、2024年3月15日をもって、廃止となります(利用者僅少のため)。ご訪問はお早めに。

北海道屈指の特急街道である石勝線。帯広行きの特急「とかち」や釧路行きの「おおぞら」が行き交う路線です。

石勝線は、帯広や釧路への短絡ルートとして建設された路線。線路自体は無人地帯を走る区間が大変長い路線でもあります。そのため、特急はたくさん走るものの、石勝線の普通列車は非常に本数が少ないのです。新夕張〜新得間に至っては普通列車の運行が1本もない、全国でも非常に珍しい区間となっています。

石勝線のかろうじて普通列車がある区間、1日上下3本のみ普通列車が走る区間に、滝ノ上(たきのうえ)駅はあります。

停車する普通列車は1両ですが、ホームはかなり長いです。単線区間なので、特急列車が列車同士の行き合い(すれ違い)のために停車することはあるのでしょう。もちろんその場合でもドアは開かず、乗客の乗り降りができない「運転停車」の扱いであることは間違いありません。

駅のすぐ隣にはスノーシェルターが。線路のポイント部分に雪が積もらないよう、屋根で覆われているのです。石勝線らしい光景です。シェルター内には信号機が見えますね。赤信号を灯しています。

駅舎も大きく、跨線橋もホームも立派なものです。いくら普通列車の本数が少なくとも、この辺りはさすが大動脈の路線だと実感させられます。

駅舎は北海道の無人駅でよく見るタイプのもの。屋根が赤く塗られているのが特徴的です。

駅舎の前には花が植えられ、誰も来ない駅にも彩りを添えます。

駅正面です。「滝ノ上」という駅名ですが、本当に「滝の上にあること」からきている名前です。だとしたら、その滝を見に行くしかないですよね。私が滝好きであるのは事実ですが、だから滝を見に行こうと言っているのではありません。無人駅巡りの醍醐味は、その駅周辺を散策し、そこにしかない絶景に巡り合うことです。

滝ノ上駅から国道274号を歩くと、「千鳥ヶ滝」200m先左の看板が見えます。この千鳥ヶ滝こそ、滝ノ上駅の名前の由来となった滝です。

千鳥ヶ滝がある滝の上公園に到着しました。左手には農作物の直売所が。歩いている人は少ないですが、車はそこそこ停まっているようです。

公園内に入り、すぐに見えてくるのがレンガの重厚な建物です。これが滝の上発電所です。1925年に北海道炭礦汽船株式会社が、自社用の発電所として設置しました。かつては炭鉱で栄えていた夕張、その名残を今に伝えるものの一つとなっています。

と書くとかつて稼働していた発電所、のように思われるかもしれませんが、驚くことに現役の発電所です。いや、正確に言えば写真のレンガの建物は使用されていません。現在は別の新しい建物を使っています。

さらに歩くと見えてくるのが千鳥橋です。赤くて目立つ橋なので、見逃す心配はなさそうです。千鳥ヶ滝はこの橋の上から見ることができます。

少し雨が降ってきました。

千鳥ヶ滝です。しかし独特な地形です。私は地質マニアではないので詳しいことは分かりませんが、地質学的にかなり珍しい地形であるそうです。神秘的な雰囲気を感じますね。

この渓谷に神秘的な雰囲気を感じるのは私だけではなく、アイヌの信仰の対象でもあったようです。この場所はアイヌ語でポンソーカムイコタンと呼ばれています。アイヌ語に慣れている方ならサクッと意味がわかるのではないでしょうか。

「ポン」=小さい 「ソー」=滝 「カムイ」=神 「コタン』=集落です。いずれも基礎単語ですのでアイヌ語に詳しくなりたい方は覚えておきましょう。「カムイコタン」で1語という見方もできますね。神々の住む場所の意です。

要するに、ポンソーカムイコタンは、「小さな滝のある神々の住む場所」という意味です。この付近にはアイヌも伝統的に多く住んでおり、この独特で神秘的な渓谷は神聖な場所とされていました。アイヌの信仰の対象となる場所は、自然の美しさや厳しさを感じる場所が多い印象を受けます。

この滝の見頃は、雪解けの時期と紅葉の季節でしょう。前者ではいま岩が露出している部分も滝になり、雄大な姿が見られることでしょうし、後者では滝とセットで綺麗な紅葉を見ることができます。

千鳥橋の奥には、「滝の吊橋」という橋もあります。一見こちらの方が滝が見えそうな名前ですが、滝が見えるのは千鳥橋の方なので、お間違えのないようお気をつけください。

滝は見えませんが、滝の吊橋から眺める渓谷も非常に美しいものです。よほど時間のない限りはどちらの橋も渡ってみることをお勧めします。

逆に言えば、滝の上公園ではこの2つの橋を渡れば、滝と渓谷を眺めることができますので、ある程度の目的を達することができるとも言えるでしょう。

それでは駅に戻りましょう。列車に乗り遅れると大変です。

滝ノ上駅は、千鳥ヶ滝も含めての滝ノ上駅です。この「滝ノ上」の滝には、アイヌとともに歩んだ歴史があります。この駅ができるずっとずっと前から、ここに住むアイヌの人々の信仰を集めてきたのです。そしてこの駅がなくなっても、石勝線がなくなっても、日本がなくなっても、きっとこの地に流れ続けているのではないでしょうか。無人駅探訪は、普通だったら行かない場所を知り、その土地の歴史や文化を感じることができる一つの手段です。

自然に敬意をはらう、アイヌの精神。北海道を旅するなら、忘れてはならないものです。

滝ノ上駅・2016年

2016年の滝ノ上駅。この時は下車は叶いませんでしたが、千鳥ヶ滝はこの時も雄大な流れを見せていたことでしょう。駅に停車中の列車からはもちろん滝の姿は見えませんが、そんなことに思いを馳せるのも旅かもしれません。

駅舎の雰囲気も変わりません。ほとんど訪れることがないお客さんを、静かに待ち続けている駅舎です。

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