※初野駅は、2024年3月15日をもって、廃止となります(利用者僅少のため)。ご訪問はお早めに。
もともとお米が育たなかった北海道ですが、品種改良により寒冷な北海道でも育つものができ、今では全国有数の米の産地です。
そんな北海道でも、さすがに道北の厳しい寒さでは稲作は厳しいです。旭川から日本のてっぺん、稚内へ向けて走る宗谷線に乗っていると、最初は見えていた田園風景も途中で見えなくなるのです。
では田園風景の北限はどこか、というと、宗谷線内では美深町の初野(はつの)駅付近になります。
初野駅は、プレハブの小さな待合室と板張りのホームをもった簡素な駅。しかしここが日本の鉄道から見られる田園風景の、いちばん北にあたる駅です。
駅前の道路を歩いてみます。踏切の右側に初野駅があります。北海道らしい広い道路です。
その道路の両側には、首を垂れる稲穂が。もう9月も終わる頃、収穫まであと少しでしょう。
なんとものどかで気持ちのいい風景が広がります。
周囲はこんなに開放的な雰囲気なのに、駅と線路だけは木々に囲まれています。これは鉄道林。鉄道施設を暴風雪などから守るために植えられた木々です。
待合室は小さなプレハブです。どうやらJRの所有ではなく美深町が所有している待合室のようです。横には自転車置き場もありました。
待合室内は狭いですが、窓が大きく明るいです。また綺麗に保たれていますね。
簡素な駅施設。周囲は田園が広がり、この駅に停車する列車は1日上下4本ずつ。それでも数年前までは、学生の利用があった駅です。
駅のホームはちょっとしたウッドデッキのような雰囲気です。この角度から見れば、森の中の駅のように見えます。
ホームに上がってみます。朝の太陽が板張りのホームを照らし、ホームがまぶしく感じます。
ホームについている柵は仮設のもの。簡素な駅と青空の組み合わせは映えますね。北海道らしくない「初野」の駅名の由来はあまり定かではないようです。隣駅には「おんねない」との表示がありますが、初野駅と恩根内(おんねない)駅の間には2021年まで紋穂内(もんぽない)駅がありました。
人の気配も、車の気配もありません。風に揺れる木々の音と、鳥の鳴き声だけが響きます。
ホームの端には「ホーム端」の看板が。積雪時にはホームの端がわからなくなってしまうことがあるので、その注意喚起として立てられているのだと思います。なんだか字体がポップです。
この駅も類に漏れず、もともと正式な駅として開業したわけではありません。もともと住民のための簡易的な乗降場、仮乗降場として開業し、のちに国鉄分割民営化とともに駅に昇格しました。しかし仮乗降場としての開業は1948年と、他の仮乗降場と比べるといささか長い歴史を持っています。
(以上2023年9月訪問時)
初野駅・2022年
2022年夏の初野駅です。
自転車置き場がありますが、自転車は1台も置かれていません。季節的なものかもしれませんが、2023年と比べて駅舎左側に草が繁茂しています。2023年では結構刈り取られていたのですがね。
初野駅・2021年
2021年冬の初野駅です。
待合室は雪に囲まれています。それでも隣の紋穂内駅の雪の積もり具合と比べるとマイルドな気がするのは気のせいでしょうか。
駅名標は新しく綺麗です。2021年は、宗谷線の駅が一気に12駅も廃止になった年です。そしてこの年にJRが手放したものの、自治体が駅の管理を引き受けることによりかろうじて生き残った駅が宗谷線内だけで17駅。なんと全部で29駅が廃止候補に上がっていたのです。
当然この駅も廃止候補に上がっていたんでしょう?と思うでしょう。実は意外なことに、この駅は学生の利用があり、廃止候補に上がらなかったのです。名寄(なよろ)〜稚内の間で廃止候補に上がらなかったのはここ初野駅と、智恵文(ちえぶん)駅、勇知(ゆうち)駅、あとは特急停車駅だけです。他の駅が存廃の淵に立たされる中、まさかこの初野に廃止の話が全く出ないとは、驚いた方も多いことでしょう。
初野駅・2013年 夏
2013年の初野駅。雰囲気は変わりません。
この頃はホームに柵がありません。夏は柵がなくても大丈夫そうですが、積雪時はどこまでがホームなのかがわからなくなるので、転落防止用の柵は危険防止に役立つことでしょう。
緑の中の板張りホーム。雰囲気は大自然です。
古いタイプの駅名標です。かなり年季が入っていました。
初野駅・2013年 春
今は廃止となってしまいましたが、かつては稚内駅を朝6時20分ごろに出る名寄行きの普通列車がありました。当時は宗谷線の本数も今より多く、小さな駅にもこまめに停まる普通列車と、あまりに小さな駅は通過する普通列車とがありました。(どちらも普通列車です。北海道では、普通列車が一部の駅を通過するのは普通のことです。)
稚内を6時20分ごろに出る普通列車は、終点の名寄まで小さな駅にもこまめに停まるタイプの普通列車でした。駅施設が非常に簡素で、乗降客がほとんどいない糠南(ぬかなん)や北星(ほくせい)、南幌延(みなみほろのべ)などにも全て停まる列車でしたが、なぜかこの初野駅だけは通過していました。その普通列車の唯一の通過駅だったのです。
当時、宗谷線のこの区間には1日上下5本ずつ普通列車が走っていましたが、初野駅に停まっていた列車は1日上下3本ずつのみ。今では普通列車の本数は1日上下4本ずつのみに削減されてしまいましたが、そのうち全ての列車が初野駅に停まるようになりました。宗谷線の減便によって、なぜか停車本数が増えてしまった駅でもあります。意外とこういう駅は宗谷線内にいくつかあるのですけどね。
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