※金山駅は、2024年3月31日をもって、廃止となります(根室線・富良野〜新得間路線廃止のため)。ご訪問はお早めに。
富良野駅から4駅。根室線・金山(かなやま)駅は、山中の静かな駅でした。
降り立つとまず目につくのが味わいのある木造駅舎。歴史を感じさせます。
全国に「金山駅」は3つあるようです。残りの2つは愛知県と福岡県にありますが、この金山駅が一番歴史が古いです。この駅の開業は1900年のこと。北海道内でも結構歴史のある部類です。現在の駅舎に建て替えられたのは1934年のこと。それでもだいぶ古いですね。
この金山駅の名前の由来は周辺の地名からですが、付近を流れる空知川やトナシベツ川で砂金が取れたことに由来します。アイヌ語地名ではありません。ただし「金山」という名が付けられる前は類にもれずアイヌ語由来の地名であり、川の名前と同じトナシベツ(十梨別)と呼ばれた地域だったそうです。「十梨別駅」の方が駅の名前としては味わいがあったかもしれませんね。トナシベツの語源については、「トゥナㇱぺツ(早い川)」や「トゥニウㇱぺツ(柏の木が多い川)」の2つの説があるようです。
「かなやま」の駅名板が並びます。駅舎の軒下は広く、かつての主要駅という趣を感じさせます。石勝(せきしょう)線が開業する前は、この駅は占冠(しむかっぷ)や日高地方の玄関口として機能し、金山駅周辺は宿場町として栄えていたそうです。金山駅と現在の石勝線・占冠駅の間には金山峠という峠があり、国道237号で越えることができます。実は金山駅と占冠駅、遠いように見えて国道237号でわずか20kmほどです。道路も決して広くはないですが、しっかり舗装されています。
ちなみに国道237号・金山峠の東側にある道道1030号・幾寅(いくとら)峠は、南富良野町から占冠村の有名リゾート「星野リゾート トマム」の近くへ抜けれられる最短経路ではありますが、道路は未舗装で狭く、急カーブの連続で、当然のようにスマホは圏外、崖の隣を走るところも多く脱輪リスクも大きいという、初心者はなるべく近寄らない方がいい道になっています。「ナビで案内されるが走ってはいけない道」として有名です。
駅舎の中のベンチには、綺麗な、そして大きな座布団が敷かれていました。
駅舎は大きいですが、乗客が立ち入ることのできる待合スペースが広いわけではありません。
駅正面です。昭和にタイムスリップしたかのような風景です。飾り気のないシンプルな木造駅舎が、山中の雰囲気によく映えます。
一見、正面に「金山駅」の文字がない駅舎に見えますが、実はガラス面に書かれています。ただしガラスの上に黒文字で「金山駅」と書かれているので、駅舎内の暗さと同化し、非常に見にくいです。
全く人の気配はありませんが、バス停がありました。「金山駅前」バス停です。
バスの本数は1日2本。それも下金山までです。この駅からの脱出にバスを使うのはかなり難しそうです。
日が傾き、少し暗くなってくる中、虫の声が響くだけの駅は旅情をひきたてますね。ひと夏の思い出です。
昔は賑やかな駅だったのでしょう。
保線車両を入れる車庫もあるようです。かつて金山保線区があったように、現在でもここは保線や除雪において欠かせない役割を果たしているのでしょう。
駅のすぐ横にあるのは、かつての金山保線区の詰所です。保線作業員の方の事務所として活用されていたのでしょう。
その隣には煉瓦の小屋があります。これは「ランプ小屋」といいます。今は列車の車内照明は古い車両でも蛍光灯、新しい車両ではLEDですが、かつては違いました。明治時代の客車車内の照明は、灯油ランプが使用されており、そのランプと燃料をストックしておく小屋がこのランプ小屋だったのです。
どういうことかというと、日が暮れて辺りが暗くなってくる頃に、作業員の人がこのランプ小屋から灯油ランプを取り出して駅に停車中の車両の上に上がり、天井から客室内に灯油ランプを吊るして車内に明かりを灯していたのです。今ではとても信じられない光景ですが、かつては本当にそのようにして車内を照らしていました。
そして、そんな時代に使われていた小屋が今でも残っているわけですから、まさに奇跡のような建物です。よく解体されずに残っていましたよね。かつては主要駅を中心に普通にあったものですが、現在まで残っているのは非常に珍しいと思います。
この小屋が煉瓦造りなのは、灯油ランプという危険物を入れるためです。木造だと燃えてしまいますからね。
周囲は虫の楽園のようです。虫の鳴き声は心地いいですが、時折黒くて大きなアブが襲ってくるのでドキッとします。
駅から国道237号線に出てみます。数軒の建物が見えました。
(以上2019年8月訪問時)
金山駅・2019年 春
雪の残る金山駅です。やはり乗降客はありません。
煉瓦の倉庫にも、雪が乗っていました。このランプ小屋にとって、一体何度目の冬になるのでしょうか。