空港のある千歳市。財政破綻を経験した夕張市。これらは全国的に名前が知られています。
しかしその間にある由仁町(ゆにちょう)はなかなか知られていません。駅もありますが、特急列車も通らないので、目立つ存在ではないのでしょう。
その由仁駅の近く、歩いてすぐの場所には、小さな川が流れています。
のどかな風景、綺麗な水です。子どもの頃、学校帰りにこんな川で遊びたかったな一なんて思ってしまう風景です。とはいえ、こんな感じの川は全国どこにでもあるような気がしますが、実はこの川、知る人ぞ知るちょっとした名所なのです。その理由はこの川の名前にあります。
この川、ヤリキレナイ川といいます。その名前から、バラエティ番組などでたまに登場することのある川です。
ヤリキレナイ川の由来
ヤリキレナイ川は全長5kmの短い川で、夕張川に合流しています。夕張川は江別市(札幌市の北東に隣接する市です)で石狩川に合流するので、石狩川水系になります。
北海道にある程度慣れている人であれば、この川の名前がアイヌ語に由来することはすぐにわかるでしょう。アイヌ語の「ナイ」は川を意味しますからね。
語源は「魚の住まない川」を意味する「ヤンケ・ナイ」や「片割れの川」を意味する「イヤル・キナイ」と言われています。昭和の時代での正式名称は「ヤンケナイ川」だったという話もありますし、北海道を「北海道」と命名したことで有名な松浦武四郎の本には「イヤルキナイ」と表記されているようです。ただそれが「ヤリキレナイ」になったのは偶然の産物ではなく、時折大雨が降ると氾濫してしまい、農作物や家屋に被害をもたらしたため、住民が「ヤリキレナイ川」と呼び始めたのが由来という話もあります。
その通称名のヤリキレナイ川が正式な名前になったのは、昭和41年の氾濫のとき、その復旧のために補助金申請を行った際に正式名称(おそらく「ヤンケナイ川」だと思われる)ではなく「ヤリキレナイ川」として申請してしまったのが発端のようです。
もし語源が「イヤル・キナイ」だったとしたら、「ヤルキナイ川」になってもおかしくなかったかもしれませんね。
そんなやりきれなかったヤリキレナイ川ですが、現在では治水がしっかりしているのか、氾濫による洪水はほとんどなくなっているようです。ハザードマップを見ても、このヤリキレナイ川の近くは特に危険地域ではありません。
このような開けた場所のヤリキレナイ川は、本当に駅からすぐのところです。由仁駅を出て、駅前を走る道道477号を右手(北)方向に進み、適当な場所で左(西)に曲がればヤリキレナイ川にぶつかることができます。川なのでしっかり長さがありますから、右に何メートル、左に何メートルのような正解はありません。ぶっちゃけ駅から真っ直ぐ(西に)歩いてもヤリキレナイ川にぶつかることはできるはずです。道道477号を右に進んでから左に曲がった方がいいと書いたのは、その方が近いだろうという、ただそれだけに過ぎません。
ヤリキレナイ川の訪問ガイド
引用元:Google社 Google マップ
青い矢印は経路の一例です。矢印の先の細い川がヤリキレナイ川になります。
はっきり言ってしまえば、由仁駅の正面(駅舎がある出口)から歩けば、適当に歩いてもたどり着けます。スマホのマップ機能だと、このような小さな川は表示されないこともありますが、ご心配なく。駅の裏側、すなわち駅舎のない方ではないので、そこだけ注意してください。
車で来られた方も、由仁駅に車をとめて川まで歩くのがいいと思います。付近に駐車場が少なく、また川の近くは道幅が狭い上に住民の方の行き来もあるので、川の近くに駐車すると迷惑になっていまう可能性があります。
川にたどり着いたら左右を見渡して、適切な看板を探してくださいね。
時間があると言う方は、ぜひ道道477号を北へずーっと歩いてみてください。道道477号は途中で右に折れ、道は道道694号に変わりますが、構わず直進していきます。大体の区間では歩道があるので、安心して歩くことができます。
引用元:Google社 Google マップ
すると辿り着くのがここです。由仁駅から普通に歩いて20分弱でしょうか。ヤリキレナイ川の大きな看板と、森の中を流れる少し神秘的なヤリキレナイ川を拝むことができます。ここにある看板は大きくて綺麗なので、記念撮影にも適しているでしょう。
名前が変わっているだけの川ですが、話のネタになりますので、訪問されるのもいいと思います。まだまだ知る人ぞ知る存在で、観光客はほとんどいませんよ。
そしてせっかく由仁町に行ったのなら、近くにある「ユンニの湯」に入ってくるのもいいと思います。日帰り入浴もできますし、宿泊もできる立派な施設です。やりきれない時は、ぜひヤリキレナイ川に行って、その帰りに温泉でのんびりしてきてはいかがでしょうか。