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なぜスイッチバックするの? 遠軽駅の歴史・魅力と周辺散歩

鉄道・航空・バス

北海道屈指の名駅舎で知られる遠軽(えんがる)駅。まずは遠軽駅の位置をお伝えしましょう。旭川〜北見〜網走を結ぶ、石北線の主要駅の一つです。

遠軽駅スイッチバックの謎

札幌から網走行きの特急「オホーツク」に乗り込み3時間半強。途中の遠軽駅に到着すると、列車の進行方向が逆向きになります。

このように、列車の進行方向が変わるのを「スイッチバック」と呼びます。普通は、勾配の急な路線で、険しい地形をカーブで登るのが難しい場合や、勾配の途中に駅を設ける場合に採用される方式です。

しかし、ここ遠軽駅は平らな地形です。なぜスイッチバックするのでしょうか。

その答えは、名寄本線にあります。現在では北見、網走方面のアクセスは石北線しかありませんが、石北線ができたのは1932年のこと。北海道の鉄道の中では比較的新しい路線です。

石北線が通るのは、石北峠などに代表されるように、険しい山の中。かつてはこのような過酷な場所に鉄道を敷くことなどできなかったのです。

では石北線の開通前はどのように北見や網走にアクセスしていたかというと、宗谷線の名寄(なよろ)から分岐して、オホーツク海沿いの興部(おこっぺ)、紋別(もんべつ)を経由して遠軽へ、そして北見、網走というルートが主流でした。これがかつての名寄本線です。以下のようなルートになります。

引用元:Google社 Google マップ

ところが、見ての通り遠回りですよね。お分かりの通り遠軽・北見・網走付近はアクセスが悪く、貧しい生活を強いられていました。そこで望まれたのが、旭川と遠軽を短絡する石北線の建設です。

当時はあまりの貧しさに、遠軽では毎日カボチャばかり食べていたと言われ、石北線の早期建設は悲願でした。石北線の工事延期を政府が決めた際、早期建設を訴えるために、その悲惨な状況をカボチャを持って政府に直談判しに行った「かぼちゃ陳情団」は有名です。

満を持して石北線が開通すると、こちらが遠軽・北見方面へのメインルートになります。石北線は、遠軽駅に名寄本線とは逆方向からアプローチすることになりました。

引用元:Google社 Google マップ

その後、1989年に名寄本線が廃止され、石北線だけが残り、現在に至ります。

引用元:Google社 Google マップ

このようにして遠軽駅のスイッチバックができたというわけです。要するに、遠軽のスイッチバックはかつての名寄本線がメインルートだった時の名残というわけです。

そういえば遠軽駅のホームには・・・

「紋別・名寄方面は〜番線」の文字が残っていますね。かつて、名寄本線がまだ存在し、ここ遠軽から紋別・名寄方面へ行けた時の名残です。

遠軽駅の駅舎

高台に建っている、三角屋根が特徴的な駅舎。まさに国鉄時代を今に伝える名駅舎です。これほどの主要駅で、これほどの味わい深い駅舎があるのは道内でもほぼ唯一といっていいでしょう。

駅舎の横には駅そばがあった跡があります。昭和の雰囲気です。この駅そば、「北一そば」という名前で2019年まで営業していましたが、店主の逝去に伴い閉店となりました。

営業していた当時の写真もありました。しかしこの時も定休日だったのか閉まっており、私はここで駅そばを食べたことは残念ながらありません。

もう一つ、遠軽駅で有名だったのは駅弁の「かにめし」ですね。長い間遠軽の名物で、特急列車にも積み込んで車内で販売していました。しかし、2015年に特急列車から車内販売がなくなったことをきっかけに、車内で駅弁が売れなくなり、廃業してしまいました。絶品だったらしいですが、こちらも私は食したことがありません。

遠軽駅のホームに出ても、映画で登場しそうな光景が広がります。

「改札口」の黄色い表示だけがJRっていう感じですね。しっかり駅員さんがいる主要駅ですが、当然のように自動改札はありません。2023年10月現在、石北線の駅は旭川駅を除いてどの駅にも自動改札はないです。北見駅や網走駅にすらありませんが、列車の本数が限られているので基本的に必要ないですよね。

「駅長事務室」の表示。何十年ここにあるのでしょうか。

跨線橋を渡ったところにある2・3番ホームも、いかにもロマン溢れる北の駅です。

遠軽駅の周辺

主要駅ではあるので、駅前はしっかり街が形成され、車の姿もあります。一見、店の姿も見えますが、シャッターが目立ち、活気はほとんどありません。人通りもありません。食料、スナックや雑貨などの買い物はかなり厳しそうです。

かつては賑やかな商店街だったのでしょう。

国道242号まで出ると、歩道は融雪され、車も多く、雰囲気はしっかり街中です。飲食店などもあるようですが、数は多くなく、街の規模の割に、駅周辺が不便な印象は否めません。

そしてさらに、この遠軽駅近くにはコンビニがないのです。最寄りのコンビニは遠軽厚生病院の中にあるローソンで、駅から550〜600メートルほどあります。遠軽駅での食料調達は難易度が高いので、旅行される際は注意です。網走駅もコンビニは遠いですが、あそこは網走駅自体が町外れにあるので仕方がないにしても、ここは駅が街の中心部に近いのに、意外と不便なのです。地域密着のスーパーみたいなものがあればいいのですが、それすら見当たりません。

そしてもう1つ。厚生病院のローソンの次に近いコンビニはセブンで、その次がまたローソンです。北海道コンビニの王者、セイコーマートが遠軽駅周辺にはありません。遠軽の町にある3軒のセイコーマートは、いずれも駅から遠いので、注意が必要です。セイコーマートは、大手が出店しないような過疎地域にもインフラのようにしっかりあるのですが、遠軽駅周辺にはないのです。

遠軽駅付近は、ホテルもバスターミナルもあり、しっかりした街があるという印象を抱きがちですが、買い物という点ではしっかり注意する必要がありそうです。逆にいえば、コンビニが見えないので、駅周辺の北のロマンあふれる景観が維持されている、と捉えることもできそうですね。

その代わりなのか、駅の自動販売機ではスナックが売られていました。小腹が空いた際は覗いてみてもいいでしょう。

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