日高地方。苫小牧と襟裳岬の中間くらいに位置する新冠(にいかっぷ)町は、人口5000人ほどの小さな町で、北海道の中では決して存在感のある町ではないかもしれません。しかし、実際はかなり独特で面白い町だったりします。
新冠で有名なのが、まずは競走馬。競走馬の産地として知られ、数多くの名馬を世に送り出しています。そしてもう一つが「レコード」で、これがなかなかに面白いのです。
レコードってご存知ですか?


当然ですが、私もレコードは知らない世代です。おそらく新冠に来るまでは、「レコード」自体は知っていましたが、見たことはなかったと思います。簡単に言えば、かつて使われていた円盤状の音楽記録装置で、「CDのひと世代前のやつ」と言えばわかりやすいでしょうか。今は音楽を聴く際はストリーミングが一般的ですが、その1世代前はCDでしょう。そのさらにひと世代前が、レコードというわけです。1980年ごろがレコードの最盛期でした。
なぜ「新冠=レコード」???
普通その土地で有名なものと言ったら、「その土地で生産されているもの」が多いと思います。「蕎麦が有名」と言えばそれは蕎麦の産地と言う意味でしょうし、「工芸品が有名」と言えば「工芸品を生産している場所」と言う意味でしょう。
しかし新冠では、レコードを生産しているわけでも、かつて生産していたわけでもありません。
では、なぜ「新冠=レコード」になったのか。その理由は、1990年ごろ、人口減少対策として、レコードを使ったまちづくりを行なったことにあります。一人のレコード愛好家の発案により、アナログレコードを「20世紀の音楽文化を記録した歴史遺産」と位置付け、これを町をあげて後世に繋いでいくことにしたのです。
そんな経緯から、世界トップクラスのレコードコレクションを新冠に作ろうとしました。全国からレコードの寄贈を募り、たくさんのレコードを新冠に集めて、「レコードの町 新冠」を作ろうとしたのです。
そこでできた施設が「レ・コード館」です。全国から集められたレコードを保存し、私たち一般人も聞くことができる施設です。ここに集まっているレコードの数はなんと100万枚以上。「レコードの町新冠」のアイデンティティとも言える場所です。
ちなみに「レコード館」ではなく「レ・コード館」です。それは、単なる「レコード」の保管ではなく、「レ」=re即ちRemember、Reflesh、Relaxなどの意味を、「コード」=cordはラテン語で心を意味するため、レコードを人の心を思い出させるもの、リフレッシュさせたりリラックスさせるものとして捉えていることを表しているようです。発音は別に「レ コード館」と区切る必要はなく、「レコード館」でいいみたいです。
レ・コード館は道の駅の隣。ホテルは全く別の場所。

一見地図を見ると「道の駅の一部がレコード館になっているのかな?」と思ってしまうかもしれませんが、道の駅とレコード館は隣にありますが別の施設です。ただ隣接しているので、レコード館でじっくり見学した後に道の駅で食事・買い物をしたりすることも可能です。便利ですよね。
さらに、「レ・コードの湯」という言葉もありますが、これは「新冠温泉 ホテルヒルズ」の温泉を指すもので、「レ・コード館」とは全く別の施設です。「レ・コードの湯」の方は、レ・コード館から歩いて25分ほどかかる場所なので、決して近い場所とは言えないかもしれませんね。またこの道の駅やレ・コード館にはホテルは併設されていません。
レ・コード館の観光ガイド


観光の所要時間について
先述の通り、レ・コード館は新冠のアイデンティティとも言える施設で、とっても面白いです。以下に見どころを紹介しますが、しっかり見るには1時間以上かかるでしょう。混雑状況にもよりますが、「1時間15分程度」が標準的な観光時間かな、と思います。
さらに、これも先述の通り、レ・コード館の隣には道の駅が併設されているので、道の駅で食事をしたり買い物をしたりソフトクリームを食べたり、、、なんてことを考えたらもっと滞在時間が長くてもいいはずです。
レ・コード館自体の入場は無料

レ・コード館の入場自体は無料です。レコードの展示や、レ・コード館に込められた思いなどを見学することができます。

展望台も無料
レ・コード館には展望台も併設されており、無料で上がることができます。展望台からは、太平洋の大海原や新冠の街並みを見渡せます。



ミュージアムは有料だがとってもおすすめ!
レ・コード館の中には有料ゾーンがあり、それがミュージアムです。無料ゾーンで満足してしまうと、有料ゾーンまでは行かなくていいや、、、って思ってしまうのが我々庶民というものですが、ここの有料ゾーンはすっごくおすすめです。入場料は大人300円(2026年3月現在)でしたが、300円でこんな体験させてもらっていいの?って本当に申し訳なくなるくらいでした。
というのも、ミュージアムの入場料300円を払うと、後述する「レ・コードホール」に入れてもらうこともできるのです。
ミュージアム
有料エリアであるミュージアムでは、レコードの歴史を中心に学ぶことができます。



レ・コードホール
なかなかにすごいのはここです。ミュージアムの入場料を払うことで、このレ・コードホールも利用することができます。ここはレコードの生の音を聞くことができるホールで、20分間利用させてもらえるので、大体4曲ほど、自分で好きな曲を選んで、そのレコードを聞くことができます。当然のことながら、曲のラインナップは古いものが多いですが、それでもこんなにあるのか!というくらいのレパートリーがあります。ほとんどが一般人から当館に寄贈されたレコードであるそうです。

かなり広いホールですが、貸切で聴くことができます。

スピーカーも超巨大で本格的なもの。スピーカーには大きな穴から小さな穴まで4つの穴がついており、それぞれ大きい方から、低音、中音、高音、超高音のスピーカーになっています。レコードの音楽をこんなスピーカーから聴けるのは、本当に貴重な経験です。
レコードの音の特徴は、小さな雑音や、人間の耳には聞こえないような周波数の音までしっかり記録されていることです。確かにCDは小さくて持ち運びやすいですが、その分データ量を小さくするため、このような音はあまり記録されていません。mp3方式なんてもっとデータ量が小さく、もっともっと音の情報がカットされています。
というわけで、レコードから流れてくる音楽は、こういった小さな雑音や人間に聞こえないような音までもしっかり再現したもので、まるで目の前で演奏され、目の前で歌手が歌っているかのような空気感と迫力を感じることができます。このレ・コードホールで目を閉じて聴くと、本当のコンサートホールにいるような気がするかもしれません。
おまけ:道の駅のピーマンソフトはおすすめ!
レ・コード館の隣には道の駅があることは先述しました。レストラン、ショップがあるくらいのこぢんまりとした道の駅ではありますが、ここで売られている「ピーマンソフト」はとっても美味しいです。
そう、新冠は北海道で一番のピーマンの産地。え、ピーマンソフトなんて美味しいの?なんて思うかもしれませんが、ピーマンの香りがありつつも、ほんのりとした爽やかな甘さがあり非常に美味しいです。他ではなかなか食べられない貴重な味なので、ぜひぜひ食べてみてください。


