知床の奥にある、気になるけれどなかなか行けない場所。それが「カムイワッカ湯の滝」ではないでしょうか。個人での立ち入りはできず、カムイワッカ湯の滝へ行くには専用のガイドツアーに参加することが必須です。
ガイドツアーでは、カムイワッカ湯の滝を登っていくことができます。「別に登らなくていい、滝を下から見るだけでいい」という方もいるかもしれませんが、カムイワッカ湯の滝は長い渓流爆。わかりやすく言えば、いくつかの滝が連続している、その全体の流れのことを「カムイワッカ湯の滝」と呼ぶわけで、全貌を一目で見ることはできません。自分で滝を登っていかないと、カムイワッカの湯の滝の全貌を味わうことはできないのです。
でも、滝登りなんて、なかなか日常生活でやるものではありません。体力的にどうなのか、危険なのか、どういった装備が必要かといったことは、難しいのではないかと思います。
「参加してみてどうだった?」「実際滝上りは難しいの?」「服装や持ち物は?」といった疑問から、「滝登りやって見たいけれど、体力的に心配・・・」「怪我しないか心配・・・」といった疑問にまで、体験記を交えながら答えていきます。
はじめに:「カムイワッカの滝」と「カムイワッカ湯の滝」は違います!
まずはじめに。「カムイワッカの滝」と「カムイワッカ湯の滝」は別の滝です。「カムイワッカ湯の滝」を略して「カムイワッカの滝」などと呼んでしまうと、誤解を招く可能性があるので注意しましょう。
「カムイワッカの滝」と「カムイワッカ湯の滝」は、どちらも同じカムイワッカ川の滝です。カムイワッカ川の上流に近い部分、滝登りができる流れが「カムイワッカ湯の滝」で、そこから下流に行って海に注ぐ場所にあるのが「カムイワッカの滝」です。したがって、「カムイワッカ湯の滝」は滝登りをして見るものであるのに対し、「カムイワッカの滝」は船に乗って海の上から見るものです。
当記事で紹介するのは「カムイワッカ湯の滝」です。
カムイワッカ湯の滝は温泉が流れる滝!
「カムイワッカ湯の滝」一番のポイントはこれでしょう。カムイワッカ湯の滝は、温泉が流れている滝なのです。普通の滝は水が流れていますが、それが水ではなく温泉なのです。
カムイワッカの湯の滝の源流は知床半島の硫黄山。硫黄山と言うと、摩周湖の近くにあるアトサヌプリを指すことが多いですが、その硫黄山とは違う硫黄山です。硫黄山といっても複数あるんですよね。アトサヌプリの近くにある名湯・川湯温泉が強酸性であるように、このカムイワッカ湯の滝を流れる温泉もpH1.7程度の強酸性です。
そしてこの、「滝を流れる水が強酸性の温泉」であるという事実が、「滝登り」に最適なコンディションを生み出しているのです。
魚がいない!藻も生えない!
まずはこれです。硫黄山から流れてくる温泉は、硫黄成分を多く含むので生物にとって毒です。だから川には魚もいなければ藻も生えません。普通の川登りだと、ヒルの危険があったり魚に噛まれたりするリスクもある中で、カムイワッカ湯の滝は安心です。生物が住めっこない環境なのですから、川の中で変な生き物に襲われることはありません。
またプランクトンなどもないので、川の水は濁らず透明。川の底まで見渡せるので、安心して足を進められます。
川に直接足を入れても冷たくない!
本当に「冷たくない」かは季節によりますが、実際温泉が流れていますので、普通の川の水の冷たさとはまるっきり違います。基本的には「あたたかい」です。知床は夏でもそんなに暑くならないことが多いので、川の水が冷たくて気持ちいい!といった感じにはあまりなりません。暖かいお湯が流れていることは、滝登りにおいて素晴らしい要素です。
ついでに入浴して帰れる!
そしてこれ。温泉水が流れているなら、やっぱり入浴して帰りたいですよね。ぜひ全身浸かってから帰ることをお勧めします。とはいっても風呂ではなくあくまでも「川」ですから、素っ裸でドボン!はできません。濡れてもいい服で入り、着替えの持参を忘れずに。
カムイワッカ湯の滝への行き方は?
カムイワッカ湯の滝を登るには、ガイドツアーへの参加が必須です。ツアーに申し込みをし、その内容を確認してください。ツアーによっては、ホテルまで迎えに来てくれるものもあったり、知床五湖からシャトルバスで連れて行ってくれたりします。ツアーの内容を確認して、集合・解散場所を確認しておきましょう。
カムイワッカ湯の滝のぼりの詳細と体験記
スタート地点から1の滝へ
ここが滝登りのスタート地点。道路を離れ、ここから上流(写真左方向)に向かって登っていきます。
最初は至って平坦な流れ。安心して歩けます。
水は透き通ったエメラルドグリーン。息を呑むほど美しいです。
やがて大きな滝に着きます。これが1の滝です。
1の滝から2の滝へ
1の滝を登っていきます。急な流れを横目に、流れの穏やかな場所を選んで登ります。
それにしても、岩肌をなめるようにしながらストンと流れ落ちていく姿が美しいですね。そして綺麗な滝壺を形成しています。
1の滝を越えるとまた穏やかな流れに。落石も結構あるのでしょう。時折大きな岩がゴロゴロしています。
2の滝に到着です。こちらは階段状の滝ですね。
2の滝から3の滝を越えて4の滝へ
2の滝もちょっとした難所。じっくりコースを見極めて登る必要があるでしょう。
地道に1つ1つ登っていきます。
そして3の滝に到着です。この「3の滝登り」が、カムイワッカ湯の滝の最大の難所です。写真右側の方が傾斜が緩いので、そちら側から登る方が楽ではあります。ただ写真左側の傾斜がきつい方を登る方が楽しいとのことで、今回はそちらから登っていくことに。一口に「カムイワッカ湯の滝のぼり」といっても、楽なルートを選んで滝を登るのか、ちょっと負荷の大きい楽しいルートを選んで登るのか、など色々な選択肢がありますから、年齢や体力などに応じて、自分に合ったルートで登ることができますよ。
せっかくの難所なので、登りながら上を見上げて1枚。結構迫力ありますよね。
3の滝を登り終えると、こんなふうに水がキュッと集められた流れもあったりして。自然って面白いですよね。
そして、最終到達点である4の滝です。4の滝から先は、立ち入り禁止のロープがしてあり、これ以上先に進むことはできません。
帰りは途中の滝の滝壺にドボンして、温泉を楽しんでいくことができます。
体力はどの程度必要??
体力的なもので言えば、決してハードではありません。距離も長くないですし、ごく普通に日常生活を送れるだけの体力があれば、基本的に問題ありません。
ただし、やっぱり覚えておきたいのは何ヶ所か難所があることです。95%くらいの場所は、普通に日常生活を送れて、低山の一番簡単な登山道を歩けるくらいであれば、何の問題もない場所だと思います。ただ5%くらい、本格的に「滝を登る」という場所があります。特別な能力は必要ありませんが、ちょっとヒヤヒヤする場所で、少し緊張感が求められるでしょう。足を踏み外したりすることがないよう、十分に気をつける必要があります。最悪の場合、滝壺まで落ちることになるので、非常に危険です。
こういった「岩登り」「滝登り」に関しては、日常生活でその能力を鍛えることは難しいので、何かそのための特別な準備をするというよりも、当日ちゃんと気を付けることが一番です。焦ってどんどん進むのではなく、自分のペースでゆっくり上がるのがいいでしょう。不安なときはガイドさんに遠慮なく言えば、アドバイスをもらえるはずです。
「自分が登れるか心配」という方は、個人的には諦めてしまうのではなく、装備(特に靴!)をしっかりして、事前にガイドさんに不安を伝えておくのがいいのではないでしょうか。滝の登り方も何通りかコースがあるので、そういった方でも安全に登れるような易しいルートを教えてくれたりしますよ。
装備はどの程度必要??
大丈夫な人なら、サンダルだけで登れてしまう
まずは最小限の装備から。あまり推奨されるものではありませんが、大丈夫な人なら、サンダル1つで登れてしまいます。
一応難易度の参考になると思い、このように正直に書いていますが、推奨されるものではありません。というか、良い子はやめてください。あくまでも、若くて健康なら過度に心配しなくていいですよ、という意味です。
ウォーターシューズを履くのが望ましい
やっぱり、一部では本格的に滝を登る場所があります。ちょっと足を滑らせたり、足を置く場所を間違えるとかなり危ないことは頭に入れておいてください。ツアーによっては「ウォーターシューズは必須ではない」という書き方のものも多く、確かに必須ではないのですが、日頃運動しない方や、体力に自信のない方は、必ずウォーターシューズを用意することをお勧めします。実際、しっかりとウォーターシューズを履いて滝登りをされる方が多いですし、装備がしっかりしているだけで危険は大きく減ります。
軍手もあるといい
滝登りの際、手を使うことは必須です。直接素手で岩を掴んで登ってもOKですが、やはり軍手を用意するのがいいでしょう。
水に濡れるので防水のもののほうが望ましいことは確かですが、そこまで気にする必要はありません。最重要装備は靴です。
小さめのリュック
滝登りは両手両足を使います。両手を空けられるリュックが必須です。そしてリュックは防水のものが望ましいですが、難しいようであれば濡れてはいけないものをジップロックに入れ、それをリュックに入れるなどして、防水対策をしましょう。
ちなみに、荷物が濡れることは避けなければなりません。濡れても乾くでしょ!と思うでしょうが、よく思い出してください。カムイワッカ湯の滝を流れている水は強酸性の温泉です。この温泉に浸してしまうと金属は思いっきり錆びますし、服なども素材によっては、乾いてもそのシミが残ります。所持品は極力濡らさないように気をつけましょう。
特に、スマートフォン等は気をつけましょう。水の中にジャボンと落としたら終了です。ポケットに入れながら歩くのは結構危険だったりします。
その他必要なもの
このほかには、ヘルメット・タオル・着替え・飲みものが必須です。ヘルメットは貸し出ししてくれるツアーも多いので、確認しておきましょう。
着替えも大事です。意図せず濡れることもあるでしょうし、何より大自然で本当に気持ちいいので、温泉にドボン!したい気持ちになると思います。着替えがないと、せっかくの楽しみ、全身ドボン!ができません。全身ずぶ濡れになってもいいように、着替えを一式用意していくべきです。
他に、皮膚が弱い方は真水を持っていきましょう。温泉に濡れた部分を真水で洗い流さないと、痒くなる方もいるようです。
さらに一言
私は舐めてかかっていたのでリュックを持っていかず、がっつりポケットの中に貴重品を入れ、さらに首からカメラを下げてアタックしましたが、やめた方がいいです。滝に登るとき、体の前側は濡れると思ってください。荷物は全て背中側に。そういった意味でリュックが必須なのです。ただ単に両手が空けばいいという問題ではありませんので、素直に持ち物が全て入るリュックを持っていきましょう。
カムイワッカ湯の滝のぼりツアーへのリンク
「カムイワッカ湯の滝のぼりツアー」の中で、代表的なものは以下でしょう(他にもありますが)。ツアーの申し込みは、それぞれの公式HPから。
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