目の前は湿原!糸魚沢駅で別寒辺牛湿原の雰囲気を味わってみた!

道東の要衝・釧路駅から日本本土最東端のまち・根室方面への列車に乗って1時間程度。別寒辺牛(べかんべうし)湿原が車窓に広がっている最中、特に街が見えるわけでもない本当に湿原の中で、なぜか列車は駅にとまります。糸魚沢(いといざわ)駅です。

と言っても、湿原の真ん中に糸魚沢駅があるわけではありません。駅裏は全部湿原となっていますが、駅の表側、すなわち駅舎のある側は湿原ではなく、そこそこ車の通りもある片側1車線の道路があります。

アイヌ語らしくない「糸魚沢」と言う名前はアイヌ語の意訳からきており、北海道のアイヌ語らしくない地名にはよくあるパターンです。元々のアイヌ語の地名に対し、そのアイヌ語の発音に合う漢字をあてて日本語の地名にしたのではなく、そのアイヌ語の意味に合致する漢字を選び、日本語の地名にしたというタイプです。

その元となったアイヌ語には諸説ありますが、チライカリペッ(ciray-kari-pet):「(魚の)イトウが通う川」やチライカペッ(ciray-kar-pet):「イトウを取る川」などの説があるようです。いずれにしろ、「イトウ」の和名が「糸魚」なので、「糸魚沢」はざっくりイトウの沢(川)、という意味であることは間違いないでしょう。イトウは生息数が少なく幻の魚と言われており、日本では基本的に北海道でしか見られない魚です。阿寒湖とかに行くとイトウを食べることができますよ。

駅の裏側はすぐ湿原です。同じように湿原のそばにある釧路湿原駅は有名ですが、この駅はほとんど知られていないでしょう。駅前には小さな集落があるものの、ひとけは感じません。

普通列車は最果ての街・根室に向けて走り去っていきました。

駅名標はすっかり色褪せ、フレームも錆びきっているようです。ここまで色が抜けた駅名標も、なかなか珍しいものです。この駅にはホームは1つしかありませんが、実は駅名標は2つ設置されています。そしてもう一つの駅名標も・・・

仲良く同じ色合いになってしまっています。いつからここに立っているのでしょうか。

駅舎はログハウス調の新しいものです。2015年までは古くて立派な木造駅舎が建っていましたが、老朽化のため解体、現在の駅舎に建て替えられました。

駅舎のホーム側は少し味気ない「JR糸魚沢」の表示。これはいかにもJRの駅という感じで面白くないですね。

一方、駅正面の駅名板は木製で、温もりを感じます。

訪問したのは9月の終わり頃ですが、もう風は冷たく、寒さすら感じました。

新しい駅舎なだけあって、駅舎内は非常に綺麗です。建物自体がしっかりしているので、駅舎の中はほんのり暖かく感じます。もちろん暖房の類はありませんが、きっと真冬でも外より幾分暖かいでしょう。

また待合室内の電気はとても明るく、これなら真っ暗な糸魚沢の夜でも安心して列車を待てそうです。1日上下4〜5本しか本数がありませんが、長い待ち時間を快適に過ごせるのはポイントが高いですね。

駅を訪れた旅人が自由に思い出を書き込める「駅ノート」も置いてあったので、一筆書いていくことにしました。

駅舎はなんだか山小屋のようにも見えます。

日が暮れていきます。空のグラデーションが美しく、駅舎の明かりには温もりを感じます。湿原の先に続いていく線路も、旅情をかきたてます。

暗くなってしまえばもう周辺散策はできませんが、この風景だけで十分でしょう。降りた価値があるというものです。

糸魚沢駅は2022年3月のダイヤ改正で廃止となりました。

(以上2021年9月訪問時)

目次

糸魚沢駅・2014年

2014年、まだ木造駅舎が残っていた頃の糸魚沢駅です。

ところどころ補修されながら大切に使われていた糸魚沢駅の駅舎。見事な佇まいです。

この「JR糸魚沢」の看板、どこかで見覚えがありますね。はい、この駅名板が、新駅舎の駅名板として再利用されていたようです。

ホーム側に移動します。

ホーム側も味わい深い雰囲気です。駅舎にはかなり年季が入っていることがわかります。

そして気になるのがこれです。これも新駅舎の駅名板として再利用されていました。旧駅舎の駅正面の駅名板は新駅舎のホーム側に、旧駅舎のホーム側の駅名板は新駅舎の正面側に移されています。駅舎新築に伴い、攻守交代をしたようですね。

かつての駅舎は、片流れの屋根が特徴的でした。結構個性的ですね。

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この記事を書いた人

道外出身・道外在住大学生。
小学生のころから北海道の魅力にとりつかれ、北海道旅行回数は30回超。
詳しくは「ご挨拶」ページを参照。
2024年5月25日Xアカウント開設。

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