何もない原野!人が立ち入っていい場所とすら思えない初田牛駅

釧路駅からさらに東。北海道の東の果てに向かう花咲線。辺り一面原野の広がる場所に、列車はとまります。初田牛(はったうし)駅です。

初田牛とは不思議な駅名ですが、例に漏れずこちらもアイヌ語由来の地名並びに駅名です。ただしその語源には諸説あり、はっきりしていないようです。アイヌ語の「ハッタウㇱイ(hat-ta-us-i)」=「いつもヤマブドウを採るところ」などの説がよく書かれていますが、近くには和田牛(わだうし)川という川が流れていたりもして、和田牛の語源は「オワッタラウシ(o-watara-ushu-i)」=「川尻に岩があるもの」だと考えられていたりします。ワとハは日本語的にはかなり似てる文字だと思うので、和田牛と初田牛の語源は同じである気がするのですが。たとえ全く同じとまではいかなくても、双方に一切関係がないとは思えません。

駅の正面側(上の写真における右側)には線路沿いに木々が植えられていますが、これは鉄道林でしょう。鉄道林は鉄道施設を守るために植林された木々で、暴風雪から駅を守るためのものが代表的ですが、ここの鉄道林は霧の被害を防ぐためのものかもしれません。この辺りは霧がよく発生する場所です。

本当に見渡す限り原野で、とても駅が存在していいロケーションではありません。人が立ち入ることすら憚られる場所といった雰囲気です。

駅正面の鉄道林の中には、枯れかかっている木もあるようでした。最果てのこの地は、人だけでなく木が暮らす環境としても過酷なようです。

早春、まだまだ残る雪と、濃い青空が気持ちいいです。そして何の音も聞こえません。

空は本当に綺麗なグラデーションになっています。なんだか吸い込まれてしまいそうな錯覚を覚えます。

右を見ても左を見ても、荒涼とした風景。壮観です。

この駅だって、もともと何もないところにできたわけではもちろんありません。現在の風景からは想像し難いですが、かつては酪農家を中心に、たくさんの人が暮らしていた場所であるようです。

かつては大きな木造駅舎が立っていたとのことですが、そんな駅舎はすでに解体され、貧相なプレハブ駅舎となっています。昔の大きな駅舎の基礎だけがちょっと顔を見せていますかね。それにしてもこの取ってつけたようなプレハブが、この荒涼とした風景にはよく映える気がします。たまたまですが、駅舎の色も青空と雪の色、といったようにも見え、この日の天気にとけこんでいます。

駅舎内は狭いものの、太陽の光が差し込み明るい空間でした。全く人の気配を感じられない周辺環境ですが、駅舎内だけは少しだけ、ほんの少しだけ人の営みがあることを感じられました。

駅舎から、駅前の道路を見渡します。

駅舎から眺めた駅前通りがこれです。舗装もされていませんし、何もありません。なぜか車が1台とまっていましたが、この車の所有者に出会うことはありませんでした。

駅前通りを少し歩き、振り返って駅を眺めます。とても駅へと続く道には見えません。

駅前の林を抜けると、こんな光景が。いったいどこに繋がっていく道なのでしょうか。このまま歩いていくと見知らぬ世界に連れていかれそうな雰囲気です。もう3月ですが、道は所々凍っており、気をつけて歩かないと滑ってしまいます。

こんな場所、夜に来れる場所ではないですが、星が綺麗でしょうね。山の中ではなく、平らなので空を遮るものはなく、360度プラネタリウム状態でしょう。昼間も青空に包まれているような感覚でした。空気も澄んでおり、本当に気持ちよかったですね。

空の高さと、透明なほどに透き通る青さ、そしてなんだか空の丸さも感じました。

初田牛駅は、2019年にその役目を終えました。現在では、初田牛駅があったことを示す、駅名標の形をしたモニュメントが設置されています。

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初田牛駅・2014年

2014年の初田牛駅です。

周囲は霧に包まれており、神秘的な雰囲気です。この駅にとまる列車は全部1両(だと思います)。ホームのうち、乗降に使わない場所は雑草で覆われています。乗降する部分だけはしっかり草刈りが行われているようです。

やはり周囲は何もありません。遠くへ伸びていく線路も、途中で雑草に覆われてしまっているように見えます。現役の鉄道路線のように見えないかもしれません。

しかしここは、本数が少ないとはいえ、時刻通りにお客さんを乗せて列車が走っているのです。乗ってきた列車も、霧の向こうに消えていきました。

どこまでがホームなのか、どこから原野なのか、判別が難しいです。ホームが自然に溶け込んでいます。

厚床(あっとこ)駅まで7.1km。別当賀(べっとが)駅まで8.5km。この駅周辺が原野であることを裏付けるように、両隣の駅はかなり離れています。

駅舎の位置から駅前通りを見渡します。未舗装の道は途中で霧にのまれていました。

こんな場所でも、ここは駅です。時間になれば列車がやってきます。ルパン三世のラッピング車両が到着しました。そう、ルパン三世の作者であるモンキー・パンチはこの辺り、浜中町出身ですからね。

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この記事を書いた人

道外出身・道外在住大学生。
小学生のころから北海道の魅力にとりつかれ、北海道旅行回数は30回超。
詳しくは「ご挨拶」ページを参照。
2024年5月25日Xアカウント開設。

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