北海道を旅していると、お店の名前や地名にアイヌ語由来の言葉を見ることがあります。この記事では、覚えておくと楽しいであろう基本のアイヌ語を一覧にして紹介します。これくらいの単語を覚えておくと、北海道旅行での発見が増え、楽しみもきっと増えることでしょう。
超基本単語
まずはこちらの記事で割愛する超基本単語についてです。次の単語とそれに関連する言葉については、以下の記事にまとめています。
・アイヌ(人間)
・イランカラプテ(こんにちは)
・カムイ(神)
・コタン(村)
・モシリ(大地)
・ワッカ(水)
・ヌプリ(山)
・ピリカ(かわいい・きれい)
・ウポポイ(大勢で歌うこと)
・ナイ/ぺツ(川)
その他関連語句:アイヌモシリ・カムイモシリ・アぺフチカムイ・ポクナシリ・アイヌコタン・カムイコタン

あ行
アトゥイ:海
イオマンテ:熊送り
アイヌの大切な儀式の一つ。アイヌ文化では、熊はカムイモシリからの贈り物。しかもカムイの中でも特に特別な存在とされてきました。カムイモシリから人間の住む世界であるアイヌモシリにやってきた熊の魂を、再びカムイモシリに送り返すお祭りです。「カムイモシリ」「アイヌモシリ」は「超基本単語一覧」の記事で扱っています。
イオル:狩猟・採集をする範囲。狩場。
イコロ:宝物・宝刀
イタク:言葉(アイヌイタク:アイヌ語)
イヤイライケレ:ありがとう
エトク:〜の先、(時間的に)〜の前
エペレ:小熊
エンルム:突き出たところ・岬
襟裳(えりも)岬の語源と言われています。また近くの様似町には「エンルム岬」があります。
か行
カイ:強い・怖い
アイヌが自身を指す言葉としても使われます。「この地に生まれた人」という意味も含み、この「カイ」という言葉を聞いた松浦武四郎が「北加伊道(ほっかいどう)」という名前を思いつき、現在の「北海道」の名前の由来となったと言われています。
カムイチェプ:鮭
カムイノミ:神に祈る
カント:空
キムンカムイ:直訳すると「山のカムイ」。すなわちヒグマの意。
アイヌにとってヒグマは、カムイの中でも特別な存在。「キムンカムイ」という漫画もあります。
キヤイ:光
コタンコロクル:村長
村の運営を行なっていただけでなく、コタンで行われる神を祀る祭りを司祭することが大きな役目でした。多くの場合では、その家で代々受け継がれていく形式でした。
コロポックル:アイヌの伝説に登場する小人。
「フキの下の人」という意味。特徴としては、交易の際に相手との接触を好まないことが挙げられ、その姿を見せなかったと言われます。実際に交易は好んでいたものの、夜にこっそり差し出すといったようなやり取りを好んだとのことです。また土器を使用すること、竪穴住居に住んでいたことも大きな特徴として挙げられます。伝説では一応「フキの下の人」ということで、フキの葉の下に収まる「小人」ということになっていますが、北海道には2メートル以上もある巨大なフキがあり、実際には普通のアイヌと体格差はほとんどないという説もあります。北海道を代表するお土産「じゃがポックル」の名前の由来となっています。
コンル:氷
さ行
サツ:乾いた
札幌の語源の一つ。「サッポロペツ」=「乾いた大きな川」です。
サモロモシリ:本州
サロルンカムイ:タンチョウ
シリ:島、土地、天候
「モシリ」が大地を指すことからも想像がつくように、「シリ」は基本的に陸地を指します。利尻島、釧路町の尻羽岬(シレパ岬)などもこの「シリ」が語源と考えられています。先ほど出てきた「エトク」と合わせ、「シリエトク」で陸地の突端という意味で、「知床」の語源になっています。
スルク:毒・特にトリカブト
セセク:熱い、暑くなる
セセクイ(セセキ)で「熱いところ」すなわち温泉を指します。
ソー:滝
た行
タネポ ウヌカラン ナ:はじめまして
タント:今日
チカプ:鳥
チセ:家
こちらは「超基本単語」に入れてもいいくらいベーシックなワード。「ポン」(小さい)と合わせて小さな家「ポンチセ」なんて言葉もよく出てきます。また「チセコロクル」で家の主という意味になります。
チニタ:(寝ているときにみる)夢
チャシ:城
トノト:酒
トンコリ:アイヌの弦楽器。ギターに似ているが弦が5弦で平べったい形をしている。
な行
二:木
ニサッタ:明日
ニセイ:渓谷・断崖
二タイ:森
は行
パンケ:下流・下手
ピラ:崖
ペンケ:上流・上手
ペンケ・パンケでセットであることが多いです。上流の沼は「ペンケ沼」下流の沼が「パンケ沼」。また「ペンケ橋」「パンケ橋」などです。
ポッケ:温かい
ポロ:大きい
札幌、野幌(のっぽろ)、羽幌(はぼろ)、幌内、幌別。地名の由来は諸説ありますが、地名に「幌」はよく出て来ます。
ま行
ムックリ:アイヌの弦楽器。口琴。弦を弾いてその音を口の中で共鳴させて音を出す。
メノコ:女の子・娘
や行
ヤウンクル:北海道本島に住むアイヌ。
ヤウンモシリ:北海道本島
ユカラ:アイヌの叙事詩。
ユカラはアイヌの中で、口承文芸として代々語り継がれてきた物語。アイヌは文字を持たないため、口承文芸が発展しており、叙事詩はアイヌ文化の重要な要素です。多くは英雄の主人公がいて、その主人公に関する物語が、短いメロディの繰り返しにのせて語り継がれてきました。
ら行
レラ:風
わ行
ワリウネクル:アイヌ(人間)を生み出した神。
アイヌ語を覚えることはアイヌ文化を知ること!
冒頭で述べたように、基本的なアイヌ語を覚えることで北海道旅行の楽しみは増えます。「ペンケ沼」に出会った時に何も知らない人は「変な沼だなあ」と思うだけでしょうが、アイヌ語をちょっとだけわかっていればこれは上流の沼で、きっとこの下流にパンケ沼があるのだろうと推察することができます。
そして、アイヌの言葉を知ることは文化を知ることです。「イオマンテ」なんて日本語に直訳はできませんが、アイヌ文化にとってはとても重要なワードです。アイヌ語を知ることは、北海道旅行の楽しみを増やし、アイヌ文化の学習に一歩踏み入れる大きなきっかけとなることでしょう。