道南を代表する観光地の一つ、トラピスト修道院。正式名称は「厳律シトー会灯台の聖母大修道院」です。
トラピスト修道院の内部を見学するのは、事前予約が必要です。ただし、神聖な場所なので見学する際はしっかり勉強した上で、緊張感を持って行くべきです。安易な観光気分での申し込みは失礼にあたるでしょう。
そもそもトラピスト修道院って何?
はじめにトラピスト修道院とは何かについて、簡潔に記します。
キリスト教の宗派の一つに、カトリックというものがあります。そのカトリックの修道会の一つが厳律(げんりつ)シトー会です。別名トラピスト会とも言います。
修道会において、その会員はイエス・キリストの精神に則り、原則として修道院の敷地内で祈りを中心とした共同生活を送り、日々の生活を神と向き合うことに捧げます。生活は大変規則正しく、朝は3時台に起床、就寝は夜の7時台。祈りの時間、聖なる読書の時間、そして労働の時間がしっかり決められています。そして修道院での生活は基本的に自給自足。俗世間から隔離され、修道院の外に出ることは基本的にできません。
そんなトラピスト会の修道院がトラピスト修道院です。北海道北斗市のこの修道院は男子修道院で、トラピスト会の男子会員が共同生活を送っています。
観光で見るべき場所は?
トラピスト修道院は女人禁制であるものの、男性の方であれば事前予約をすることで内部見学をすることができます。しかし冒頭でも述べたように、トラピスト修道院は神聖な場所です。カヌーを予約するテンションで申し込むものではありません。
この記事では、事前予約なしに見ることができる場所に絞ってお伝えします。通常の観光であればそれで十分です。
メインの建物を見ずに帰る人はいないでしょうから、それを除けばトラピスト修道院で見逃してはいけないのは、以下の3つでしょう。
・ポプラ並木(ローマへの道)
・ソフトクリーム
・ルルドの洞窟
この3つを順に紹介したのち、アクセス方法にも言及します。
ポプラ並木
最初の「ポプラ並木」は、修道院へ上がっていく際に必ず通るはずなので、事前知識がなくとも見逃すことはないでしょう。ポプラ並木の先に駐車場があるので、車をそこに停めてから、ポプラ並木を歩いて戻ってみることをおすすめします。そしてその際には、ぜひ左右も見渡してみましょう。本当に綺麗な庭が整備されていることがわかります。凄いですよ。
ソフトクリーム
2つ目の「ソフトクリーム」、ただの観光地のソフトクリームだと思って食べずに帰ってはいけません。ここはソフトクリームを食べることが観光の一つです。
修道士は、先述したように、俗世間から離れ自給自足生活を送っています。その一環として修道院の中では酪農が行われており、なんとトラピスト修道院が道南の酪農発祥の地とも言われています。売店のソフトクリームは、まさにトラピスト修道院の自家製ソフトクリーム。このソフトクリームを食べることが、修道院を知ることにつながるのです。もちろん味は絶品です。
一緒についてくるクッキーも、トラピスト修道院自家製のトラピストバターを使った「トラピストクッキー」。おまけだと思ってはいけません。ちなみにトラピストクッキーは、その完成度から広く知られており、函館市内でもお土産に買うことができます。
あと、ソフトクリームの話に戻りますが、ソフトクリームの販売時期は通年ではないので、そこはご注意ください。ざっくり言うと、夏は販売されており、冬は販売されていません。
ルルドの洞窟
3つ目の「ルルドの洞窟」。駐車場から約1.5 km道を進んだ先にあります。駐車場から歩くと片道30分ほど。車でも途中まで行けるはずです。フランスの巡礼地、ルルドの洞窟を再現しています。また、この場所からは函館山や青森を望めるなど、眺めもいいです。お時間があれば、訪問されるといいと思います。
あくまでも、トラピスト修道院は神聖な場所です。それを踏まえて観光を楽しみましょうね。
トラピスト修道院へは車で!
続いてアクセスについてです。トラピスト修道院へ行く方法は主に2つです。
・列車:道南いさりび鉄道線 渡島当別駅から徒歩20分
・車・レンタカー 函館・函館空港から車で約40分 / 新函館北斗駅から車で約30分
渡島当別駅には「トラピスト修道院入口」と書いてあるので列車で行くのが便利なのだろうと思う方も多いでしょう。
しかし基本的には、トラピスト修道院は車での訪問をおすすめします。それは、トラピスト修道院という観光地の特性上、列車で行くには非常にデメリットが多いからです。やはり修道院ですから、一般の観光地とは少し勝手が違います。
列車本数自体は、もちろん都会から来ると少ないですが、極端に不便なわけではありません。しっかり時刻表を調べていけば大丈夫です。列車で訪問する問題は他にあります。具体的には以下の3つです。
・駅からの距離
・ルルドの洞窟への距離
・時間調整の難しさ
まず駅からの距離。徒歩20分といえども、函館山が見えたり有名なポプラ並木を抜けたりなので、とても楽しいと思います。ただ修道院ゆえか、基本的に上り坂が続くので、体力のない人だときついかもしれません。たかが20分だから、と甘く見ず、20分の登山ができるか、という方向で判断することをお勧めします。
つぎに2点目、「ルルドの洞窟への距離」です。ルルドの洞窟へは、駐車場からさらに徒歩30分です。すなわち、駅からルルドの洞窟までは徒歩50分ほどになります。往復100分です。
建物を見るのに10分、洞窟に10分、ソフトクリームに10分時間をかければ、全部で130分かかる計算になります。列車に乗り遅れたら大変なので、列車の時刻と相談しながらうまくタイムマネジメントをしないといけません。
また、コインロッカー等はありませんし、どこかで荷物を預かってくれたりもしません。歩くのが好きであっても、重い荷物を持ちながらとなれば話は別でしょう。
また熊の出没にも注意が必要です。
3点目は「時間調整の難しさ」です。ここは修道院です。典型的な観光地とは異なります。売店はありますが、基本的にはソフトクリームを売っているだけと考えたほうがいいでしょう。観光地としてイメージするような売店ではありません。列車の時間まで余裕があるから、売店でも見て時間を潰そうというわけにはいかないのです。
基本的には「屋内にいる」ことは難しいと考えてください。
渡島当別駅まで戻れば駅の待合室はありますが、無人駅なので椅子に座れるくらいです。ただ、郵便局を併設しているので、ハガキでも買って交渉すれば、冷暖房のきく建物の中に居させてもらうことはできるかもしれません。ちなみに私はそうしました。
トラピスト修道院は、有名な観光地ですし渡島当別駅の副駅名としても宣伝されているくらいですから、函館山の夜景や赤レンガ倉庫などと同じ感触で行ってしまう人も多いかもしれません。しかしここトラピスト修道院は神聖な現役の修道院なのです。観光客のために1からお膳立てしてくれる場所ではありません。あくまでも「見させていただけるのだ」という感覚で観光すべき場所です。
「トラピスチヌ修道院」もあります!
ここトラピスト修道院は厳律シトー会の男子会員が共同生活を送る修道院ですが、函館市内には女子会員が暮らす「トラピスチヌ修道院」があります。興味のある方はそちらも訪問されるといいと思います。トラピスト修道院よりも、トラピスチヌ修道院の方が訪れる観光客は多いかもしれません。