北海道の音威子府村にある小さな温泉、天塩川温泉。天塩川温泉といっても、温泉街があるわけではなく、音威子府村が運営する宿が1軒あるのみ。他は何もありません。
北海道内でもかなりニッチな場所と言えるでしょう。しかしなかなか魅力的な場所でもあります。
大自然に宿が1軒!
天塩川温泉があるのは、本当に大自然の真っ只中です。周囲は山に囲まれており、民家も見当たらない場所です。そんな中、小さな道を走っているといきなりボコんと大きな建物が現れます。これが天塩川温泉です。正式名称を音威子府村住民保養センター 天塩川温泉といいます。そしてこの建物が、唯一天塩川温泉を楽しめる施設です。宿泊も日帰り入浴も可能です。また食事も充実しており、宿に宿泊しない人、つまり日帰り入浴で来た人でも、食堂で食事をすることができます。
要注意なアクセス
基本は車でのアクセスを!
基本的には、天塩川温泉は車・レンタカーでアクセスする場所です。大自然の中ですからね。
なお、カーナビを設定する際は注意点があって、「天塩川温泉」で検索すると場所が正しく出ない場合があるようです。カーナビでは「JR天塩川温泉駅」に目的地を設定し、天塩川温泉駅の目の前のT字路を左折、南方向に向かうといいと思います。止若内橋を渡るとすぐ天塩川温泉が見えます。
これが天塩川温泉駅前のT字路。このT字路を左へ。
JRでのアクセスは要注意!
天塩川温泉駅を使うのは要注意!
まず天塩川温泉から1kmほど離れた場所に「天塩川温泉駅」があります。一見、この駅から歩けば良さそうですが、天塩川温泉に行くのにこの駅を利用するのは、上級トラベラーでない限り控えた方がいいでしょう。
まず天塩川温泉駅は、本数が少ないです。1日上下4本とかいうレベル。でもそれだけではありません。この駅、「ほとんど誰も使わない駅」と言っても差し支えなく、温泉に行く観光客の乗降はまずありません。
どうですか、これが天塩川温泉駅です。「温泉駅」なんていう観光地風な駅名とは対照的に、はっきり言って良い子は降りてはいけない駅です。
そして天塩川温泉駅から歩く場合、その距離はおよそ1kmです。決して長い距離ではありませんが、
ここを左に1km行ったところが天塩川温泉、ということからもお分かりいただけるように、初心者が安心して歩けるような道ではありません。冬は天候が悪ければ、かなり危険な道ですし、何かあっても誰かが助けてくれるような環境ではありません。
道にはこんな看板も。
JR音威子府駅から地域バスの利用がおすすめ
天塩川温泉にJRで行く場合、安全なのはJR音威子府駅まで行き、そこから地域バスで天塩川温泉に向かうことです。本数が少ないので下調べは必須ですが、危険は少なく、初心者でも安心して行くことができるでしょう。また地域バスは無料です。すごいですよね。
とはいえ、天塩川温泉駅は楽しいですよ!
以上は、一般的な話です。この話は余談ですが、天塩川温泉駅は大自然に囲まれており、降りてみると本当に気持ちのいい駅です。風情も旅情もたっぷりです。以下の記事で詳しく紹介していますので、好奇心で降りてみたい!!と思われる方は参考にしてください。ただし、降りる際はあくまでも自己責任で。
天塩川温泉の泉質は?
まず、温泉施設自体は、内湯と露天風呂、そして洗い場があり、極めて標準的な浴場と言えるでしょう。特に大きいわけでもなく、古き良き昭和の銭湯のような雰囲気です。いかにも旅の途中に泊まる宿、と言った雰囲気で、私はすごく好きでした。旅の疲れを癒し、旅の思い出に浸るにはもってこいです。
泉質は炭酸水素塩泉。皮膚を柔らかにし、美肌になるということで「美人の湯」として知られています。特筆すべきなのが、温泉中に含まれるメタホウ酸の割合が極めて高いこと。メタホウ酸は源泉1kgに対し5mg入っていれば温泉として基準を満たすのですが、ここ天塩川温泉では1158mgも含まれているようです。ちょっと桁数間違えてない??って思うレベルの含有量ですよね。
メタホウ酸には殺菌作用があり、ニキビ治療など、肌の治療効果が見込めます。切り傷などに対する効果も抜群です。
天塩川温泉が発見されたのは大正時代のこと。当初は飲泉用に販売されていただけでしたが、1973年にここ音威子府村住民保養センターができ、入浴が可能に。それ以来、「天塩川温泉」に入浴できるのはここ1軒だけです。貴重な泉質ですね。
天塩川温泉の食事は?
天塩川温泉は、食事の評判がかなりいいことで知られています。
夕食・朝食ともに、バイキング形式ではなく定食形式。
(夕食の一例)
(朝食の一例)
ご飯はおかわり自由です。
決して奇を衒うような食事ではなく、確かにメニューとしてはすごく豪華!というわけでもなく、好きなメニューを選択できるわけでもありません。ですが、1品1品の完成度が高く、すごく美味しいのです。素材がいいのです。お米もお刺身も、天ぷらも、そしてそのほかのちょっとしたものまで、美味しいんですよ。
宿泊しない場合も、天塩川温泉のレストランを利用でき、その際は普通のレストランのように色々なメニューから好きなものを選べます。中でも面白いのが天塩川温泉の源泉を練り込んだ「源泉そば」や「源泉ラーメン」。特に「源泉そば」は有名ですね。ここ音威子府村はそばの一大産地であり、「源泉そば」の他にも真っ黒い「おといねっぷ蕎麦」、逆に真っ白い「咲来そば」なども有名です。「咲来そば」は天塩川温泉では食べられないかもしれませんが。
天塩川温泉の施設・部屋は?
部屋についての詳細は、公式ホームページで確認されるのが一番いいでしょう。リンクを貼っておきます。
ざっくり書きますと、部屋もスタンダードなつくり。トイレにはウォシュレットもついています。スタッフの方は感じがいいですが、人数は決して多くなく、高度なサービスを求めてはいけません。でも基本的にちゃんとしています。
一方で、バリアフリーな施設ではありません。部屋のトイレも広くはなく、館内にはエレベータもありません。特に何の不自由もなく、自分自身で行動できるという人にとっては何の問題もない施設ですが、足腰が弱かったり、スタッフの方の特別な対応を必要とする場合は、要注意かもしれません。
用途としては、学生の合宿で使われることも多い施設です。確かに施設としても、修学旅行や合宿などでこんな宿泊まったなーなんて思うような、そんな施設です。皆さんもこんな感じの宿で先生の目をかいくぐって部屋を抜け出したりしたんじゃないでしょうか?
総合的に天塩川温泉ってどう??
個人的にはかなり好きな施設です。旅を好む人にとっては、この宿が嫌いという人は少ないのではないでしょうか。
すごく立派な宿というわけではなく、素朴ではありますが、必要なものはしっかりそろっている。変な豪華さがなく、宿としてもそこまで大きくなく、アットホームな雰囲気で落ち着く宿です。それでいて大自然に囲まれ、非日常の世界が周囲に広がっています。まさに「旅情」をかきててくれます。
安心していただきたいのが、大体このような「アットホームな宿」「旅情をかき立てる宿」と評されるような宿は、「汚い宿」「古い宿」であることが多い訳ですが、ここ天塩川温泉のすごいところは、決して汚くなく、古くもなく、不快に感じるところがほとんどないのです。潔癖の方はわかりませんが、ほとんどの方が「綺麗だ」と感じる施設だと思います。それでいて、どんな宿だったかと言われれば、真っ先に落ち着く宿で、アットホームで、旅情があって、みたいな言葉が出てくるんですよね。
こう言った意味で、「綺麗なところに泊まりたい」けど、「旅の素朴な雰囲気が欲しい」という2つのニーズを両立しているいい宿だと思います。何の不自由もなく動けて、「旅」を楽しみたい若い人にはもってこいでしょう。
一方で、やっぱり注意なのが、大自然の中だということです。夏は虫が多いですね。駐車場の車の周りに蛾の死骸が転がっていたり、露天風呂で蛾に囲まれたりアブに襲われたりはあるでしょう。露天風呂も基本虫取り網で虫を掬ってから入ろう、と言った感じです。施設は綺麗なのですが、屋外の環境的に、極端に虫が苦手な人にとってはやっぱり厳しいかもしれません。でも、屋外には大量の虫がいても、宿の中に虫が大量にいたりすることはありませんから、過度な心配は不要です。
手取り足取り何から何までやってくれる宿を期待する人にはあまり向かないかもしれません。でも、自然が好きで、グルメが好きで、温泉が好きで、旅が好きで、旅情を知っていて、自分たちだけである程度行動ができる人にとっては、こんなに素晴らしい宿はありません。ぜひ、のんびり泊まりに行ってみてください。きっと気に入ることでしょう。
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