北海道新幹線の新函館北斗駅は、函館駅と18km離れています。新函館北斗駅という駅名の通り、駅の所在地は函館市ですらなく、北斗市です。
東京方面から新幹線で来ると、新幹線を降りるのは新函館北斗駅になるわけですが、新函館北斗駅周辺は函館市の中心からも北斗市の中心からも遠く、何もありません。
そんな新函館北斗駅と函館駅の間を行き来する電車が「はこだてライナー」です。すべての新幹線に接続し、新函館北斗駅〜函館駅間を高速で移動できます。新函館北斗駅周辺は何もありませんから、新幹線で新函館北斗駅に来た乗客の多くは「はこだてライナー」で函館に向かいます。
しかしこの「はこだてライナー」、高齢の方など、なるべく座って移動したい方にとっては、結構怖い電車でもあります。
はこだてライナーは全車自由席
まず前提として、「はこだてライナー」なんていう大仰な名前はついているものの、実態は「ただの電車」だと思っていただいて大丈夫です。普通の在来線電車と同じです。新幹線に接続して走ってはいますが、新幹線に乗らない人でも使える電車ですし、逆に新幹線に乗ったからといって在来線の乗車券がなければ乗ることはできません。特別な手配や予約が必要なわけでもありません。「ただの在来線電車」であり、それ以上でもそれ以下でもありません。
というわけで、はこだてライナーは全車自由席です。普通車で来た人もグランクラスで来た人も、はこだてライナーでは皆平等です。荷物が多いから・・・という方や、体がきついから・・・などの理由で新幹線ではグリーン車やグランクラスに乗ってきた(もしくは乗る予定)としても、快適性が保証されるのは新函館北斗駅まで(もしくは新函館北斗駅から)の新幹線区間のみ。新函館北斗駅から函館駅の移動、すなわち「はこだてライナー」では全員「庶民」です。全ての乗客に着席保証はありません。
まあ短時間とは言っても、新函館北斗〜函館の所要時間は15〜22分。「北海道基準」では確かに短い乗車時間ですが、意外と無視できない時間乗ることになるのです。人によってはこの時間、ずっと着席できないのはきついでしょう。
はこだてライナーは3両編成
もうひとつ追い討ちをかけます。はこだてライナーは3両編成です(多客期には6両になることがありますが稀です)。新函館北斗駅に来る新幹線って何両編成かご存知ですか。10両編成です。10両の新幹線から乗り継ぐ電車が3両編成なのです。新幹線と比べ、「はこだてライナー」は圧倒的に着席定員が少ないのです。新幹線はほぼ満席だと700人以上乗れるらしいですが、「はこだてライナー」の座席定員は150人弱(3両編成の場合)。新幹線が混んでいると着席は難しそうだということがよくわかるでしょう。
「座れなかったら1本見送る」もできない
そしてさらに皆さんを不安にさせることを書きます。もし座れなかったら一本見送って次の電車に乗ればいいじゃない?は、なかなかできないのです。函館は首都圏や札幌のようにたくさん電車が来るわけではありません。1本電車を見送って次を待つというのは、現実的ではありません。函館駅から新函館北斗行きの「はこだてライナー」を一本見送れば新函館北斗駅発の新幹線に乗り遅れますし、新函館北斗駅から函館行きの「はこだてライナー」を1本見送ったら何もない新函館北斗駅で時間潰しをしないといけません。
「はこだてライナー」で座るコツは?
そんな、「はこだてライナー」は座れる保証がないなんて怖い。20分も揺れる電車で立つのは辛い、という方。荷物がたくさんあるからここだけは座らせてくれ、という方。以下に座るコツを紹介しますのでよかったら参考にしてください。
函館駅→新函館北斗駅へ移動する場合
こちらはそんなに難しくありません。早めに函館駅に行って改札をくぐり、早めに電車に乗って座っていることです。「はこだてライナー」の改札が始まったら真っ先に改札口を通り、ホームへ行きましょう。駅員さんに、座りたいのですが何時に来ればいいでしょうか、みたいなことを聞いておくのもいいかもしれませんね。
新函館北斗駅→函館駅へ移動する場合
難しいのはこっちです。函館駅から「はこだてライナー」に乗り込む際は、早めに駅に行けばよかったですが、新函館北斗駅で新幹線から「はこだてライナー」に乗り換える場合、そういうわけにいきません。新幹線に乗っている人たち全員、一斉に新函館北斗駅に着くからです。10両編成の新幹線のドアが一斉に開いて、みんな同時に「はこだてライナー」に向かうのです。
ではどうすればいいのか。答えは簡単です。東京方面から新函館北斗へ向かう新幹線では、あらかじめ新函館北斗駅ホームのエスカレーターに近い車両に乗っておくことです。そして新函館北斗に到着し、新幹線のドアが開いたらすぐにホームのエスカレーターを使い、乗り換え改札へ直行すればいいのです。
乗り換え改札についてはエスカレーターを上がれば、すぐに正面右手側に「在来線 のりかえ」と大きく書かれた改札口があるので、迷う心配はないと思います。エスカレーターを上がると下の写真のような風景が広がりますが、赤枠のところが「はこだてライナー」をはじめとする在来線への乗り換え口です。
では新幹線の何号車がエスカレーターから近くて、「はこだてライナー」にスムーズに乗り換えでき、はこだてライナー車内で座りやすくなるのでしょうか。新幹線は全車指定席ですから、新幹線の座席指定をするときにこれを考慮して何号車の何番の席を指定するか考えなくてはなりません。
第1候補:7号車進行方向後ろ側
一番いいのは、新幹線の座席は7号車進行方向後ろ側、例えば7号車1番〜8番くらいの席を指定し、新函館北斗到着放送とともに7号車進行後ろ側(6号車側)のデッキへ向かい、ドアの前で待っていることです。7号車進行方向後ろ側のドアは、コンコースへ向かうエスカレーターの目の前にとまります。「はこだてライナー」へ乗り換える集団の中で、先頭集団となれること間違いありません。
これをやったら「はこだてライナー」は、よほどのことがない限り座れるでしょう。
第2候補:4号車進行方向後ろ側
2番目にいいのは、4号車進行方向後ろ側、例えば4号車1番〜10番くらいの席です。同じように新函館北斗駅に近づいたら、4号車進行方向後ろ側(3号車側)のデッキへ向かい、ドアの前で待っていましょう。ただし7号車と違うのは、エスカレーターの目の前ではなく階段の目の前にとまることです。階段くらいだったら普通に上がれる、という方はここもおすすめです。
ここでも、「はこだてライナー」にはほぼ間違いなくトップレベルの早さで乗り込むことができ、座れるでしょう。
参考:エレベータを使いたい方へ
一応エレベータの位置も書いておきます。エレベータの位置は5号車進行方向後ろ側なので、5号車1番〜6番くらいの席が便利です。ただし、5号車12番は車椅子の方が利用できる席になっているので、車椅子をご利用の方は5号車12番席を指定するとエレベータから近くて楽ですし、そうでない方は車椅子利用の方がいるかもしれないことを念頭に、思いやりの心を持ってエレベータを利用されるといいと思います。
注意:以上は「新函館北斗駅12番線到着の新幹線」の情報です
以上のエスカレーター・階段・エレベータに近い号車と座席番号は、新幹線が新函館北斗駅の12番線に到着するときのものです。と言っても、通常全ての新幹線が12番線到着なので基本気にすることはありません。ただ、ダイヤの乱れや臨時列車など特殊なケースの場合は、11番線到着となる可能性もあり、その場合は上記の情報と異なるのでご了承ください。
注意!切符はあらかじめ買っておこう!
これもすごく大事です。新幹線でどんなにエスカレーターに近い車両に乗って、みんなより早く乗り換え改札に着いたとしても、乗り換え改札で引っかかってしまったら元も子もありません。「はこだてライナー」で函館に行くなら、乗車券はあらかじめ、函館までの切符を持っておき、新函館北斗駅で切符を買う必要がないようにしておきましょう。
なお、「はこだてライナー」に乗るためには特急券などは不要です。乗車券だけで乗れます。「ライナー券」みたいなのも不要です。何の変哲もない普通の乗車券で乗れます。「はこだてライナー」なんていう名前はついていますが、ただの在来線電車だと思ってもらって大丈夫です。
例)東京から新函館北斗経由で函館まで行く場合
東京→(新函館北斗経由)→函館 の乗車券 と、東京→新函館北斗 の新幹線特急券
を買っておく
<<注>> 東京→新函館北斗 の乗車券 と、新函館北斗→函館 の乗車券に分割する必要はありません。東京→(新函館北斗経由)→函館 の乗車券を購入できます。
また、2024年3月16日以降は、「はこだてライナー」はSuicaやPASMOなどのIC乗車券で乗車できるようになります。IC乗車券をお持ちなら、新幹線eチケット利用時も安心ですね。
とはいえ新函館北斗から函館までは440円。残高はチェックしておきましょう。
どうしても座りたい場合の裏技は?
以上のことを踏まえれば、「はこだてライナー」は大体座れます。でも万一、ということもあります。
ちなみに着席保証のある特急「北斗」の指定席を取る場合は、新函館北斗〜函館間で1290円(乗車券440円+指定席特急券850円)かかります。どうしても座らないとしんどい、着席保証がないと困る、という方はこの値段になってしまいます。
あとはまず誰も使わないと思いますが、スーパーブルジョワの方は特急「北斗」のグリーン車という手もあります。2060円(乗車券440円+グリーン特急券1620円)です。一般人と同じ空気を吸うのが不快という方はどうぞ。
ちなみに、バスはどうなの?という人もいるでしょう。新函館北斗〜函館間を走るバスでは函館バス[33]系統がありますが、これには注意です。これに乗ると新函館北斗〜函館間は75分ほどかかるからです。あ、函館行き(もしくは新函館北斗行き)のバスあった!といってバスに飛び乗るのは危険です。まあ、それだけ新函館北斗と函館は離れているんですよね。新函館北斗〜函館間の移動は基本JR一択なので頭に入れておきましょう。
最後に:ぶっちゃけ「はこだてライナー」って混むの?
まあ、結局これですよね。何回も旅行しているなら混むか混まないかわかるでしょ?って話ですよね。これ、場合によるんです。だからなるべく座るためのコツを紹介しているわけです。
混む時はめちゃくちゃ混みます。休み期間は特に混みますし、最近ではインバウンドも増えています。
しかし一方で、普段は割とガラガラだよな、という印象もあったりするのです。まあ、10両編成の新幹線から3両の電車に乗り継いで、その3両の電車がガラガラなことがあるのですから、いかに新幹線の乗車率が微妙なものかということは想像に難くありませんね。東京から新幹線に乗ると北海道に入る手前の新青森駅で、まるでそこが終点かのようにほとんどの乗客が降りてしまう、なんてこともあります。
東京を出る新幹線が満席近くても、仙台、盛岡、新青森でたくさんお客さんが降り、終点新函館北斗に着く頃にはほとんどお客さんが乗っていなかった・・・なんてこともしばしば。
まあ、はこだてライナーで座るコツについては知っておいて損はないと思いますから、必要な方は参考にしてください。一方で健常者の方は、本当に席を必要としている人が座れるように、「はこだてライナー」の車内で席を譲ってあげることも大事かもしれませんね。
全員に着席保証がない「はこだてライナー」。なるべく座りたい方には座るための努力が、座らなくてもいい方には必要な人に席を譲る余裕が求められそうです。