海の中に聳え立つ利尻富士の美しさは、なかなか他にあるものではありません。日本一高い山である富士山も、山梨側のここから見た方が美しいとか、いや静岡から見るんだとか、色々な論争があったりしますが、やはりそれぞれのアングルにそれぞれの美しさがあります。
利尻富士も、「絶景スポット」「撮影スポット」と呼べるようなアングルがいくつもあります。今回は自称「利尻富士を見る会」代表の私が、利尻富士を望む絶景スポットをまとめてみることとします。
A 北海道本島から利尻富士を望む
A-1 オロロンライン
北北海道の日本海側を走るのが、「日本海オロロンライン」と呼ばれる道路です。このオロロンラインから望む利尻富士が、やはり最もスタンダードな「利尻富士の姿」ではないでしょうか。海の中から突き出したように聳える利尻富士は感動的です。

ここオロロンライン沿いは、基本的にどこから見ても綺麗な利尻富士を見ることができます。道路沿いを走ると、「自分はここから見る風景が好き!」「私はここが一番綺麗だと思う!」などきっとそれぞれお気に入りのスポットが出てくると思います。オロロンライン沿いから見る利尻富士こそ、「最も象徴的な利尻富士の姿」だと思います。



A-2 サロベツ原生花園
次に紹介するのは、オロロンラインから利尻富士に背を向けて内陸へ行ったところにある、サロベツ原生花園。ここからは海は見えなく、広大な大地の中に凛々しく聳える山に見えます。普通、内陸部から利尻富士を望もうとすると他の山に隠れて裾野の部分が見えなくなったりしてしまいますが、ここサロベツ原生花園はほとんど遮るものがなく、裾野から綺麗に見えます。


遮るもののない広大な大地の中にポツンと聳える利尻富士は、なんとも言えない素晴らしさがあります。

A-3 白い道
もっと利尻富士から離れます。宗谷岬近くにある「白い道」付近。ここから望む利尻富士も非常に美しく、有名なスポットです。

利尻富士の手前に見える陸地が稚内半島です。半島ひとつ隔ててもこんなに美しいのです。



A-4 JR宗谷線
続いてJRの車窓から。どうせ並行する道路から見るのと同じでしょ??と思ってしまいますが、これが違うんですよね。JRの線路は丘の小高いところを走る場所があり、そこから見るとオロロンラインから見る利尻富士とはまた違った姿を拝めます。視点が高い分、陸と海を同時に俯瞰して眺められるのです。
ただし、この車窓が見えるのはわずか10数秒ほど。南稚内駅とその1駅南、勇知駅の間に見えますから、見たい人は稚内に向かって進行方向左側をじっくり見ておきましょう。


B 利尻島から利尻富士を眺める
利尻島に上陸すれば、より近くから迫力ある利尻富士を拝めます。
B-1 姫沼
利尻島から見る利尻富士として、最も有名なのは姫沼からの景色でしょう。利尻島を代表する風景、と言って全く過言ではないでしょう。

この写真では写っていませんが、風のない日には水面に逆さ富士を見ることもできます。
B-2 ペシ岬
もう少し街中へ。鴛泊港のすぐ近くにある「ペシ岬」からも、美しい利尻富士を望めます。ここから見る利尻富士の特徴は、手前に「ポン山」と呼ばれる小さな山が見えることですかね。利尻富士の裾野に湾内大橋や富士見大橋を望むことができるのもここならではでしょう。


さらにはフェリーと一緒に利尻富士を見ることもできたりします。
B-3 夕日が丘展望台

その名の通り夕日が美しい展望台ですが、小高い丘になっているため、町と利尻富士を同時に見ることができる、貴重なスポットです。利尻富士とその裾野に広がる街をここまで綺麗に捉えられるのは、夕日の丘展望台ならではです。
B-4 富士見大橋

利尻富士をかなり近くから見上げられるのがここ「富士見大橋」。サイクリングロードの橋ということもあり、他の場所と比べると知名度は低いですが、何よりもごつごつとした特徴的な利尻富士の地形をじっくり見られます。利尻島に来た!と感じさせる大迫力の山肌が見られるのでおすすめです。
B-5 オタトマリ沼 / 沼浦展望台(白い恋人の丘)

オタトマリ沼側から見る利尻富士は、誰もが知る北海道の銘菓「白い恋人」のパッケージに採用された場所として有名です。利尻富士町側から見るとシュッとしていて、天に向かって尖っている利尻富士ですが、こちら側から見ると少し穏やかな姿に見えたりします。
B-6 仙法志御崎公園

ここは海岸のごつごつした岩と一緒に利尻富士を拝めるスポット。ペシ岬や沓形岬からも海岸と一緒に利尻富士を眺められますが、その2つは港と利尻富士、といった風景になります。自然な海岸を見たいならここでしょう。
B-7 沓形岬公園

利尻島には大きな町(集落)が2つあります。1つは利尻富士町の鴛泊地区、そしてもう一つが利尻町の沓形地区です。利尻富士町の鴛泊から見る利尻富士に比べ、利尻町の沓形から見る利尻富士はあまり尖っているように見えず少し穏やかな姿。そんな沓形から利尻富士を眺めるのに最もおすすめの場所といえば、沓形岬です。
B-8 利尻空港
え?空港?嘘でしょ???って思いますが、利尻に来て誰もが撮りたがるのが「飛行機と利尻富士の2ショット」。もう立派な写真スポットです。

C 礼文島から利尻富士を眺める
C-1 北のカナリアパーク
映画「北のカナリアたち」のロケ地として有名なここ。礼文島の中で最も利尻富士が綺麗に見える場所と言っていいでしょう。ロケセットの校舎も、情緒あって素晴らしい風景です。


C-2 桃岩展望台
礼文島にある散策コースの中でも、最も有名な展望台がここ桃岩展望台。桃岩展望台付近からは、高い位置から、礼文島の独特な地形とその向こうに綺麗な利尻富士を拝めます。


C-3 スコトン岬

せっかくなので少し意外なところを。礼文島の最北端にある「スコトン岬」からも、利尻富士を見ることができます。礼文島の全景と、その後ろに見守るように立つ利尻富士は、なかなかいいものです。こんなところからでも見えるのか!という驚きは、礼文島の地形の平坦さを感じさせ、そして利尻富士がいかに色々な方面から見えるのか、ということが実感できる風景です。
D 海上から利尻富士を眺める
次に稚内・利尻・礼文を結ぶフェリーからも、美しい利尻富士を望めます。

E 上空から利尻富士を眺める
利尻発着の飛行機や稚内発着の飛行機に乗ると、上空から利尻富士を見ることができます。大海原に浮かぶ円錐形の利尻島を天から俯瞰して見る体験は、さらに利尻島の神秘を感じさせてくれること間違いありません。稚内・利尻行きの飛行機であれば進行左側、稚内・利尻発の飛行機であれば右側です。

「利尻富士マルチアングル」の重要な意味
利尻富士を色々な角度から眺めるのは、とても美しいです。ですが、それは同時に大きな意味を持つものでもあります。利尻は、海の中に1つだけ聳える山です。普通の内陸の山だったら、この角度から見ると別の山に遮られて見られない、と言ったことが普通ですが、周囲を海に囲まれている分、360度全方位から、そして低地からでも眺めることができ、他の山に遮られる、といったことがありません。本当に、色々な角度からシンボルのように眺められる山なのです。そういうわけで、こういった「利尻富士マルチアングルの会」ができることは、利尻山の大きな特徴の一つなのです。
それだけではありません。「どこからでも見える」利尻山は、古来から目印として重宝されてきました。まだ正確な測量なんてできなかった時代。探検家たちは北海道を歩いて巡り、現代の私たちからするととても北海道の形とは思えないほど歪な「北海道の地図」を数多く描いてきました。当時は、稚内方面や釧路方面なんていうのは地の果ての果てで、全貌なんてほとんどまともに明らかになっていませんでした。大陸とサハリンすらも混同されていた時代です。稚内方面の太平洋側なんて描かれてないよね?というくらい、今の私たちからすればある意味酷い地図なわけですが、それでも稚内方面の日本海側は、この利尻富士が目印としてあったおかげで、比較的正確にその地図が描かれていたりするのです。古くから、探検家たちにとって大きな目印として重宝されてきたのがこの利尻富士です。
さらにこの利尻富士の視認性は、日本の発展にも貢献しています。アメリカの冒険家ラナルド・マクドナルドは、どこからでも見える「利尻山」を目印に日本に来て、1848年に利尻島に上陸しています。当時は日本は鎖国体制でしたから、当然外国人の入国は禁止。上陸した利尻で捕まってしまい、のちに長崎に送られます。しかし、マクドナルドが日本に上陸したわずか5年後、1853年にはマシュー・ペリーが来航し、日本に開国を迫ります。ペリーはもちろん英語話者。しかし当時の日本人は鎖国体制でしたから、外国文化なんてほとんど入らず、英語なんてわかりません。マクドナルドはその際の通訳として活躍したのです。さらに日本人に英語を教え、「日本最初の英語教師」と呼ばれたりしています。歴史に「たら・れば」はありませんが、もし目印となる利尻島がなく、マクドナルドが日本に上陸できなかったら・・・なんて考えると、日本の開国エピソードは違うシナリオになっていたのかもしれません。
そんなことを踏まえると、利尻島はどこから見ても美しい!と思うのと同時に、「どこからでも見えてよかった」とも思ってしまいますね。まあ、こんなところにも目を向けながら、利尻富士を色々な角度から眺めるというのが「利尻富士マルチアングルの会」の本質です。いろんな場所から利尻を見てみたい!そう思った瞬間から、あなたはもう立派な「利尻富士マルチアングルの会」会員です。美しい利尻富士を探しに出かけましょう。